みなさんのお子さんは、どんな夢をもっていますか?
野球選手に宇宙飛行士、ケーキ屋さん、漫画家、今はYouTuberも人気ですよね。
このシリーズでは、子どもが憧れている職業、きっと興味がわくような注目の職業に就いた人にインタビュー。子どものときにどんなことが好きだったのか、どんな生活をしていたのかなどを伺いながら、今に至るまでのエピソードをたどります。気になるお仕事内容もたっぷり紹介!
第5弾は、絵本やイラスト、アートディレクションが大人気のtupera tuperaさんです。
tupera tupera(ツペラ ツペラ)│(左)亀山達矢さん(右)中川敦子さん
亀山達矢と中川敦子によるユニット。絵本やイラストレーションをはじめ、工作、ワークショップ、アートディレクションなど、様々な分野で幅広く活動している。絵本に「しろくまのパンツ」(ブロンズ新社)「パンダ銭湯」(絵本館)「かおノート」(コクヨ)「やさいさん」(学研教育出版)「いろいろバス」(大日本図書)「うんこしりとり」(白泉社)など、著書多数。海外でも様々な国で翻訳出版されている。NHK Eテレの工作番組「ノージーのひらめき工房」のアートディレクションも担当。「わくせいキャベジ動物図鑑」(アリス館)で第23回日本絵本賞大賞。2019年に第1回やなせたかし文化賞大賞を受賞。武蔵野美術大学油絵学科版画専攻 客員教授、大阪樟蔭女子大学 客員教授。
どんな仕事をしているの?
tupera tupera(ツペラ ツペラ)は、亀山達矢さんと中川敦子さんのご夫婦によるユニットです。絵本やイラストレーションをはじめ、工作、ワークショップ、アートディレクション、舞台美術、アニメーション、雑貨など、様々な分野で幅広く活動しています。
人気絵本の『かおノート』『やさいさん』『うんこしりとり』『パンダ銭湯』や、NHK Eテレの工作番組『ノージーのひらめき工房』など、子どもと一緒に楽しめる作品も盛りだくさん!明るい色使いで、遊び心のあるユニークなものばかりです。みなさんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
©︎NHK ETV
『ノージーのひらめき工房』は、2013年から放送されている工作番組。tupera tuperaはキャラクターや衣装、セット、ロゴなどのデザインを担当した。
カッコいいおじさんになりたい!亀山さんの幼少期
そんなお仕事をしているお二人はどのように育ったのでしょうか。まずは亀山さんからお話を伺っていきます。
亀山:三重県の伊勢神宮の近くで生まれました。実家が真珠屋さんで、バブルが弾けるまではわりと裕福でした。皮ジャンを着ていたり、ファミコンを持っていたり、生徒会長をやったりして。小学5〜6年が人生で一番モテましたね(笑)。
―― 美術はその頃から得意だったんでしょうか?
亀山:小学1年のときに絵で賞をもらって、三重県立美術館に飾られたことがありました。だけどその絵は、水をこぼしてしまって、雑巾で拭いてから提出したものだったんです(笑)。事情を知らない親や親戚は「才能があるんじゃないか」と言って、油絵教室に入ることに。最初は乗り気ではありませんでしたが、通っているうちにだんだん楽しくなってきました。
―― 中学高校はどんな様子でしたか?
亀山:中学から家庭教師を付けられて、高校はかなり厳しい男子校に入ったんです。でも良い大学に行くための勉強をするというのが全然面白くなくて。サボっては美術館へ行っていました。そんな中、たまたま親戚のおじさんがこの『アトリエの巨匠・100人』という写真集をくれて。
―― ミロやシャガールなど、そうそうたる画家のアトリエが紹介されていますね。
亀山:みんなすごくカッコいいんですよね。こういうおじさんになりたい!と思いました。それで、こうなるためには美大だ、と。面白い人や、変わった人がたくさんいる美大を目指すことにしたんです。
世界を目指す絵描きになる!中川さんの幼少期
―― では、中川さんはどのような幼少期を過ごしていたのでしょうか?
中川:私は京都で生まれて、すぐに東京の武蔵野市に引っ越しました。父が印刷会社で美術関係の営業をしていたので、家には展覧会のチケットやカタログがたくさんありましたね。
―― 羨ましい環境です。美術には幼少期から触れていたんですね。
中川:物心ついたときから絵を描くのは好きで、よく可愛い女の子を描いていました。近所のおばあちゃんがやっている絵画教室に通っていましたね。まわりよりも背が高くて天然パーマだったので、それを気にして少し引っ込み思案な性格でした。でも写生大会などで絵を褒められるうちに、だんだんと自信がついてきて。小学校の卒業文集には「世界を目指す絵描きになりたい」と書いてあります(笑)。
―― tupera tuperaの絵本は、実際に海外版も発売されているので、夢が現実になりましたね!
中川さんが小学校の高学年頃につくったいう、コラージュの作品集。小学生がつくったとは思えないクオリティで、今のtupera tuperaの作風にも通じるものを感じる。
―― その後はどのような学生生活でしたか?
中川:厳しい男子校だった亀山とは対照的で、高校は共学、しかも私服の学校だったんです。自由な校風で、文化祭や体育祭も大盛り上がりでした。ただ美術に興味がある仲間は少なく、バレー部に入っていました。
―― そこから美大を目指すんですね。
中川:自分が好きなことを勉強できる大学にいきたい!と思って美大に決めて。美術予備校で亀山と出会いました。
予備校で出会い、別々の美大に進学
―― 予備校時代についても教えてください。
亀山:毎日飲み会があったり、みんなで旅行に行ったり。すごくフリーダムで、楽しくて、衝撃的でした。第一線で活躍しているアーティストが講師を務めていたり、10浪くらいしている人もいて、面白い人にたくさん出会いました。
予備校の芸術祭で、友人たちと出し物をやったときの亀山さん(中央)と中川さん(左)。
―― 亀山さんは2浪して武蔵野美術大学へ、中川さんは1浪して多摩美術大学へ進学されました。別々の大学ですが、交流は続いていたのでしょうか?
亀山:そうですね。共通の友人も多かったですし、お互いの大学を行き来していて。僕はやっぱり面白い人に興味があったので、他の学科の人とも仲良くなって、絵はあまり描かずにお酒ばっかり飲んでいました。
―― 中川さんはどんな大学生活でしたか?
中川:染織科で織物を専攻していて、私は真面目にやっていました(笑)。大学3年のとき、予備校からのご縁で「spoken words project」というファッションブランドのアシスタントをすることになったんです。ショーの手伝いなどで、一流のモデルさんやメイクさんと関わることができました。
―― なかなか刺激的な学生生活ですね!
中川:大学後半はその仕事に夢中で、ほぼ毎日原宿の事務所に通っていました。卒業してからもアシスタントは続けていて。金銭面、体力面では大変でしたが、とても楽しく、貴重な経験になりました。
大学3年生の中川さん。芸術祭で「テキスタイルパフォーマンス」というショーをやったときの写真。
―― 亀山さんは、卒業後どういった進路を選んだのでしょうか。
亀山:広告代理店を1つ受けてみましたがサクッと落ちて。2年くらいは日雇いバイトをしながらゴロゴロしていました。夜のデパートでポスターを貼り替えたり、重い荷物を運んだり。テーマパークにガムが落ちていないかメンテナンスをする仕事もしましたが、1日でやめました(笑)。その後は、バックパッカーになってイタリアに行ってみたり。でもやっぱり日本の方がいいな、と思って3ヶ月で帰ってきました。
―― けっこう転々とされていたんですね!
中川:そうそう。大きめの送別会したのに、すぐ帰ってきたよね(笑)。
初めての二人展をきっかけに、共同制作をスタート
―― その後、tupera tuperaとして活動するまでの経緯を教えてください。
中川:私はその頃、自分がつくった布の作品を展示会などで発表し始めていました。アシスタントをやめたあと、バッグ工場でバイトをしていたのですが、それがすごく暇な仕事で。このままでは人生無駄にすると思ったんです。そんなとき亀山が暇そうにしていたので、声をかけて、一緒に展示会をやることにしました。
―― その展示会からtupera tuperaと名乗り始めたんですね!
亀山:もともとは別で活動していく予定だったんですが、この展示会でつくった作品が予想以上に売れて。調子に乗ったんですよね(笑)。それをきっかけに「次はうちで展示をしない?」「絵を描いてくれない?」と声をかけてもらうようになって、いろんな仕事につながっていきました。
初めて2人でやった展示会では、マフラーを制作。亀山さんが布を切り、中川さんが縫って絵をつくっていった。1本5万円程度で、10本が完売!知り合いではない人たちが買ってくれたそうで、現在は消息不明。持っている人がいたらぜひご一報を。
カッコいいおじさんに憧れた亀山さんと「世界を目指す絵描き」になりたかった中川さん。予備校で出会ったお二人は、展示会での共同制作をきっかけにtupera tuperaとしての活動をスタートさせました。後半の「お仕事編」では、そんなお二人が実際にどんなお仕事をしているのか詳しく伺っていきます!ぜひ合わせて読んでみてくださいね。
(2021年9月取材)
後編はこちら
子どもに人気のお仕事に注目!|tupera tuperaさん<お仕事編>
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「将来の夢はなに?」
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わかりやすくて読んで楽しい一冊を、ぜひ親子で一緒にご覧ください。