雨上がりに美しい虹が見えると、ものすごく幸せな気分になりますよね。虹はなぜできるのでしょうか。そして、なぜあんなにきれいな七色になるのでしょうか。気象予報士の今井明子さんがわかりやすく解説します。
サイエンスライター・気象予報士 今井明子さん
京都大学農学部卒。2児の母。天気の話を中心に、生き物や自然にまつわる記事や書籍を多数執筆。気象科学館の解説員や防災講師、親子向けお天気実験教室の講師なども務める。著書に、「面白いほどスッキリわかる! 世界の気候と天気のしくみ」(産業編集センター)、「こちら、横浜国大『そらの研究室』! 天気と気象の特別授業」(共著、三笠書房知的生き方文庫)などがある。
虹は、どうやってできるの?
虹は空にできるカラフルな懸け橋。雨上がりの空に虹がかかると、子どもたちも大喜びです。しかし、しばらくすると消えてしまう、はかない存在でもあります。いったい虹はどのようにしてできるのでしょうか。
太陽の光が雨粒に当たって虹ができる
太陽の光は白いのですが、これはさまざまな色の光が混ざった結果、白く見えています。虹は太陽の光が空気中を漂う雨粒に当たってできたものです。太陽の光は、水滴に入ると大気と水滴の境界で曲げられます。これを屈折といいます。屈折するときの角度が色によって違うため、太陽の白い光が水滴の中に入るときに分解されて、光がさまざまな色に分かれるのです。
虹は雨粒が大きいほどはっきり見える
実は虹は雨粒の大きさによっても見え方が違い、雨粒が大きいほどくっきりと見えて、小さいとぼんやりと見えます。また、霧が消えそうなときに白い虹が見えることもあります。霧の粒は雨粒よりも小さいので、太陽の光が当たっても色が分かれないからです。なお、虹は空気中に雨粒がなくなると見えなくなります。しばらくすると消えてしまうのはそのためです。
虹はなぜ7色なの?
虹の色は、赤・橙・黃・緑・青・藍・紫の7色です。ですが、本当に7色に分かれている虹を見たことがありますか? 青と藍の違いはわかりますか? どんなに色が多くても、せいぜい6色程度にしか見えないのは気のせいでしょうか…? 実は、日本では虹を7色としていますが、国によっては6色や5色だと考えられているところもあります。
虹の色がグラデーションで変化しているため、見え方は人それぞれなのでしょう。なお、虹は7色であると提唱したのは、万有引力の法則で有名な物理学者ニュートンです。ニュートンは、太陽のさまざまな色をドレミファソラシの7つの音になぞらえたそうです。
虹を見つけるコツとは?
虹を見つけるにはコツがあります。まず、虹は空気中に雨粒がないとできません。ということは、雨上がり直後の、雨粒がまだ空気中に漂っている短い時間がチャンスです。雨が上がったら、太陽と反対方向を探してみると、虹を見つけることができます。
虹は太陽高度が低くないと見られない
虹を見るにはもうひとつ条件があります。それは太陽高度です。実は、虹は太陽高度が低くないと見られません。というのも、虹は太陽の光が差してくる方向から常に42度の角度を保った高さに現れるからです。
一般的に太陽高度が50度以下だと虹が見えやすいと言われています。ですから、6月22日ごろの夏至付近の朝から昼間にかけては太陽高度が50度を超えるので、雨上がりには虹は出ないのです。
夏の夕方は虹が出やすい
逆に、夏の夕方、もしくは秋分から春分にかけての昼以外の時間帯などは太陽高度が50度より低いくなるので雨上がりに虹が出ます。夏にはよく夕立が発生するので、夕立で大粒の雨が降ったあと、まだ太陽が沈んでいないときに東の空を見ると、見事な虹を発見しやすいです。
くっきりとした虹とうすい虹がある
なお、虹はくっきりとした虹の外側に、うすい虹が出ることがあります。くっきりとした虹は「主虹(しゅこう・しゅにじ)」、うすい虹は「副虹(ふくこう・ふくにじ)」と呼ばれます。主虹と副虹の色の並び方は逆になります。さらに、主虹と副虹の間の空は主虹の下側よりも暗く見えます。これを「アレキサンダーの暗帯」と言います。もし虹が2本現れたらじっくり観察してみてください!
虹にもいろいろな種類がある!
太陽と逆方向に出る虹だけでなく、太陽の近くに出る虹もあります。また、アーチ状の形ではない虹色の現象もあります。見つけると幸せな気分になれるかも!? なお、これらの現象を探すときは、太陽を直接見ないように、太陽を手などで隠しながら探すようにしてください。
環天頂アーク(かんてんちょうアーク)
環天頂アークは、太陽の上のほうにできる小さな虹です。アーチの弧の部分が下にあるので、「逆さ虹」とも呼ばれます。太陽のまわりにある小さな氷の粒に太陽の光が当たり、光が分かれることでできます。環天頂アークは太陽高度が低いときに見られ、日の出の2時間後や日の入りの2時間前、もしくは冬至周辺の寒い時期に、薄雲(巻層雲)やいわし雲(巻積雲)が出ているときが狙い目です。
環水平アーク(かんすいへいアーク)
環水平アークは、ほぼ水平に見えるゆるやかな弧を描く虹で、太陽の出ている方向の空の低い位置に出ます。「水平虹」とも呼ばれています。環天頂アークと同様に太陽のまわりにある小さな氷の粒に太陽の光が当たり、光が分かれることでできます。こちらは太陽高度が高いときに見られます。薄雲やいわし雲の出ている春分~秋分の暖かい・暑い時期が発見できるチャンスです。
幻日(げんじつ)
太陽の両脇か片方の脇に小さな光が見えることがあります。これは幻日と呼ばれています。幻日は白く見えることが多いのですが、時折、虹色をしていることがあります。幻日も氷の粒に太陽の光が当たってできるのですが、氷の粒の向きがそろっていると虹色に見えるようです。薄雲(巻層雲)が出ているようなときに、太陽の周りを見てみましょう。
彩雲(さいうん)
太陽の周りにうろこ雲(巻積雲)やひつじ雲(高積雲)、綿雲(積雲)が出ているとき、太陽の近くでシャボン玉のようなカラフルな虹色に色づいた雲が見られることがあります。これが彩雲です。太陽の光が雲の粒を回り込んで進むことによって発生します。古来からよいことがある前兆とされてきましたが、コツをつかめばすぐに発見できます。
自分で虹を作ってみよう!
周りにある身近なもので、簡単に虹を作ることもできます。ぜひ、子どもといっしょに試してみてください。
プリズムを使って作る
市販のプリズムを買ってきて窓際に置くと、太陽の光が分かれて虹ができます。暗い部屋で懐中電灯を当ててみても同様に虹ができます。
ペットボトルを使って作る
プリズムが入手できない時は、水を満タンに入れたペットボトルでも虹が作れます。ペットボトルに懐中電灯で光を当てると、45°の方向に虹ができます。
庭でシャワーを使ってもできるよ!
庭で、ホースについたシャワーヘッドから水を出してみると、虹ができます。コツは、太陽を背にして水を出すことです。
次回は、空の色がテーマ。空ってなんで青いのでしょうか? そして夕焼け空はなぜ青くなるのでしょうか? 空の色の秘密について今井さんに解説してもらいます。お楽しみに!
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