蜃気楼とは? 起こるしくみや見える気象条件をわかりやすく解説 蜃気楼の実験動画も【小学理科や自由研究、お出かけ前に!】

蜃気楼とは? 起こるしくみや見える気象条件をわかりやすく解説  蜃気楼の実験動画も【小学理科や自由研究、お出かけ前に!】

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本来見えないはずの幻が見えたり、景色が歪んで見えたりする蜃気楼。普段、何気なく目にする風景も、もしかしたら蜃気楼の一種かもしれません。蜃気楼とは、いったいどんなしくみで見られるのでしょうか。そして、蜃気楼を見るためにはどのような気象条件が必要なのでしょうか。これらの疑問に、ママ気象予報士の今井明子さんがお答えします!

目次(index)

サイエンスライター・気象予報士 今井明子さんサイエンスライター・気象予報士 今井明子さん
京都大学農学部卒。2児の母。天気の話を中心に、生き物や自然にまつわる記事や書籍を多数執筆。気象科学館の解説員や防災講師、親子向けお天気実験教室の講師なども務める。著書に、「面白いほどスッキリわかる! 世界の気候と天気のしくみ」(産業編集センター)、「こちら、横浜国大『そらの研究室』! 天気と気象の特別授業」(共著、三笠書房知的生き方文庫)などがある。

「蜃気楼」ってどうやってできるの?

蜃気楼(イメージ)

砂漠を旅する人が幻のオアシスを求めてさまよい、ついに力尽きてしまう…なんていう物語をよく耳にしませんか? 遠くにオアシスが見えるのに、いつまでたってもそこにたどり着けないのは、オアシスが幻で、本当はそこには水はないからです。

このように、幻の風景が見えたり、景色が歪んで見えたりする現象こそが蜃気楼です。しかし、蜃気楼はなにも砂漠に限った現象ではなく、日本でもよく見られます。なぜ、こんな不思議な現象が起こるのでしょうか。

蜃気楼の正体は「光の屈折」

蜃気楼の正体は光の屈折

水の入ったコップにストローを入れると、ストローが折れ曲がって見えませんか? これは、水面で光が屈折するためにこのように見えます。水と空気の密度が違うので、光が屈折するのです。蜃気楼も、これと同じしくみです。密度の違う2種類の空気の間を通ると、光が直線的に進まずに途中で曲がります。景色が曲がるため、本来の姿と違って見える虚像が蜃気楼の正体なのです。

密度の違う2種類の空気とは?

さて、密度の違う2種類の空気とは何でしょうか。それは気温の違う空気です。暖かい空気はふくらみ、冷たい空気はぎゅっと縮みます。同じ体積の暖かい空気と冷たい空気を比べると、暖かい空気の密度は小さく、冷たい空気の密度は大きくなります。この暖かい空気が上にあり、冷たい空気が下にある場合にできるのが「上位蜃気楼」で、暖かい空気が下にあり、冷たい空気が上にある場合にできるのが「下位蜃気楼」です。

見つけるとラッキー!? 珍しい「上位蜃気楼」

蜃気楼(イメージ)

上位蜃気楼は、暖かい空気が上にあり、冷たい空気が下にある場合にできます。見た目は遠くの景色が上に長く伸びて見えたり、反転した景色が上のほうに見えたりします。上位蜃気楼は珍しい現象で、毎年のように発生が報告されている場所は、数えるほどしかありません。代表的な場所としては、石狩湾、オホーツク海、苫小牧沖、富山湾、琵琶湖、猪苗代湖、九十九里浜沖、伊勢湾などが挙げられます。

●風景の上方が変形する上位蜃気楼

風景の上方が変形する上位蜃気楼

下にある冷気と上にある暖気の気温変化が緩やかな場合は、見える風景が上に伸びていきます。また、下にある冷気と上にある暖気の気温変化が激しい場合は、見える風景が上に反転します。

春先のオホーツク海に現われる「幻氷」

春先のオホーツク海では、流氷が上に伸びて氷の壁のように見える「幻氷(げんぴょう)」という上位蜃気楼が見られます。基本的に上位蜃気楼は春先から初夏にかけて見られることが多いのですが、オホーツク海では厳冬期にも上位蜃気楼が見られます。

冬によく見られる「下位蜃気楼」

蜃気楼(イメージ)

寒い季節は水は空気よりも冷えにくいので、水面近くの空気は暖かくなります。その上に陸からの冷たい空気が流れ込むと、下位蜃気楼が発生しやすくなります。見た目は、本物の風景の下に、上下反転した虚像がくっついて見られるというものです。下位蜃気楼は全国の海や湖で冬によく見られます。たとえば、遠くの島が浮いているように見える「浮島現象」や、太陽の下のほうがくびれている「だるま朝日/夕日」は下位蜃気楼です。

●風景の下方が変形する下位蜃気楼

風景の下方が変形する下位蜃気楼

暖かい空気が下に、冷たい空気が上にあるときに、見える風景の下方が変形します。

真夏の「逃げ水」も下位蜃気楼

蜃気楼(イメージ)

真夏のアスファルトの上でも、下位蜃気楼はよく見られます。遠くのほうの道路の上に水たまりがあるように見える「逃げ水」もまた、下位蜃気楼なのです。これは、灼熱の太陽で熱せられたアスファルトの上にものすごく熱い空気があり、その上にそこまで熱くない(といっても真夏なので十分に暑いのですが…)空気があるときに発生します。砂漠で見られる幻のオアシスも、逃げ水です。

身近なものでお天気実験!蜃気楼を作ってみよう

身近なもので天気のしくみがよくわかる実験を紹介します。今回は蜃気楼を作る実験です。蜃気楼の正体は光の屈折ですが、水槽に真水と砂糖水を入れ、それを再現します。ぜひ、子どもと一緒に試してみてください。

次回は、虹がテーマ。虹を発見すると幸せな気分になれますが、実は見つけるコツがあるって知っていましたか? それを今井さんに解説してもらいます。お楽しみに!

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