新型コロナの感染状況が落ち着き、この冬休みこそは子どもとの帰省や旅行を楽しみたいと考えているファミリーも多いことと思います。現在の新型コロナの状況や、新たな変異株・オミクロンに関する最新情報について、小児科医で三児のパパでもある帝京大学医学部附属溝口病院の黒澤照喜先生にお聞きしました。正しい情報をふまえて、楽しく冬のお出かけをしましょう。
※本記事は取材時(2021年12月13日時点)の情報に基づいています
(監修)黒澤照喜先生(帝京大学医学部附属溝口病院小児科)
東京大学医学部卒業。同大学附属病院小児科、都立府中病院、わだ小児科・循環器内科医院などを経て、2017年より現職。
2021-2022年の冬休み、新型コロナと変異株の状況
感染者減も、新型コロナは絶滅していません!
[Q.] 新型コロナの感染者減の一方で、新しい変異株や第6波への不安も…。コロナの最新状況を教えてください。
[A.] 新たな変異株のオミクロンは空港検疫などで検出されていますが、現時点では国内での感染は小康状態を維持しています。懸念される第6波の立ち上がりと思われる人数増加は認められていません。
しかし、感染者数は落ち着いてきているものの、患者数はゼロにはなっておらず、新型コロナウイルスが絶滅したわけではありません。
オミクロンは感染力が高い! ワクチンは有効?
[Q.] 新たな変異株・オミクロンはどのようなもの? 子どもへの影響は?
[A.] ウイルスは、外側の部分がヒトの細胞とくっつくことで感染が成立するのですが、オミクロン株は、従来よりも細胞にくっつきやすく変化したものと考えられています。したがって、オミクロン株はより感染力が高いと言われているのです。
また、ワクチンで作られる免疫は、ウイルスの外側の部分と結合することによってウイルスを無効化します。このため、オミクロン株では免疫が十分に働きづらく、ワクチンを打っていても感染がより起こりやすくなることが知られています(ブレイクスルー感染)。
しかし、オミクロン株についてはまだわかっていないことも多く、重症化するのか、どのような後遺症が起こるのか、ワクチンの有効性がどれだけ下がるのかについては現在調査中です。子どもに対する感染力も、変異の特性を考えれば今後増える可能性はありますが、重症化・後遺症などについてはまだ明らかになっていません。
[Q.] 変異株は、今後もさまざまな種類が増える可能性がありますか?
[A.] ウイルスは、感染した体内で大量に複製されます。このときに完全なコピーでないものも生まれてしまい、その中でより感染力が高いなどウイルスにとって好都合なものが自然発生すれば、これが蔓延していくことになります。したがって、生物の進化と同じ原理で、新型コロナウイルスが存在する限り、変異株は今後も出現すると考えられます。
新型コロナが絶滅しない限りは、今後も適切な情報を注意深くチェックしていきましょう。
年末年始・冬休みの帰省や旅行、注意すべきポイント
「手洗い・マスク・3密回避」は継続を!
[Q.] この冬こそは帰省や旅行を楽しみにしているファミリーも多くいます。あらためて、お出かけにおいての注意すべきポイントを教えてください。
[A.] オミクロン株についての情報が不足していること、そもそもコロナウイルスは冬に活性が増えることを考慮すると、新型コロナウイルス感染を軽視するのは時期尚早です。
さらに、風邪気味の場合は新型コロナであろうとなかろうと、帰省や旅行が台無しになったり他の人にうつすのを防ぐためにも、計画の変更・中止を柔軟に検討してください。
ただし、現時点では感染が落ち着いていることも事実です。参加者が全員健康であるならば、過度に心配せず、ワクチン接種、手洗い、マスク、3密回避などの今まで通りの対策をとりながら、せっかくの久しぶりの休みを満喫するのはよいことだと思います。
帰省先や旅行先の自治体情報をチェック! PCR検査が無料のケースも
安心して帰省ができるよう、検査キット配布によるPCR検査を無料とする県や市区町村もあります。長野県・香川県・徳島県などが無料(条件あり)、宮城県は帰省者も旅行者も一部負担してくれるようです。また、「今年の年末年始は、帰省自粛を求めない」と発表する自治体もあります。事前に帰省先・旅行先の自治体情報をチェックするとよいでしょう。
年末年始の救急受診機関を確認しておくと安心
[Q.] 特に「年末年始」の時期ならではの気をつけるべきことはありますか?
[A.] 年末年始は医療機関が休みになるため、日頃から風邪などをひかないように体調を整え、帰省や旅行では無理のない計画をたてることが大切です。
また、子どもが発熱した時に慌てないように、救急受診できる医療機関を事前に調べておくと安心です。市区町村の広報やHPに記載されていることが多いので、ぜひチェックしてみてください。
新型コロナのワクチン、3回目接種や子どもの接種はどう考える?
ワクチン3回目接種によって、免疫が再び高まる
[Q.] ワクチン3回目接種はやはり受けるべき? 変異株にも有効ですか?
[A.] たとえば、赤ちゃんが接種するヒブワクチンは生後2カ月から4か月頃に連続3回、その後1歳頃にさらにもう1回接種します。最初の連続接種で免疫を高め、時期が経って免疫が下がってきたときに追加接種をすることで、免疫を再び十分にあげることが大切です。
新型コロナワクチンも同様の理由で、連続2回接種しても、間隔をあけて3回目を接種したほうが良いとされています。
オミクロン株については、上述したようにブレイクスルー感染が認められていますが、これは変異の特性によるものなのか、ワクチン接種後に免疫が下がってきているためなのか、まだはっきりしていません。
海外では、ワクチン3回接種でオミクロン株の感染予防効果が7割以上となる調査報告が発表されています。日本国内においては調査中の段階ですが、現時点においても、オミクロン株の感染におけるワクチンの有効性が完全になくなったわけではないこと、また感染しても重症化を予防できる可能性があることより、3回目の接種が推奨されています。
子どもの接種の心配ごとは、正しい情報源をあたって
[Q.] 5〜11歳の子どもへの接種も検討されはじめましたが、親の迷いや不安も多く聞かれます。今後、子どものコロナワクチン接種はどう考えるべきですか?
[A.] 現在の12歳〜19歳の接種率は、首相官邸から提出されているデータによれば、7割以上が2回目の接種を終了しているようです(2021年12月6日現在)。
海外の報告では、ワクチンの有効性・安全性ともに、5歳~11歳の子どもとそれ以上に大差はないとされています。一方で、子どもの場合は新型コロナにかかったとしても大人ほど重症化しないとされています。しかし、新型コロナに子どもがかかることによる社会的な不利益(学校などを長期間休まなければならなくなる、同居家族も濃厚接触者となり長期間休業する必要がある)、まれながらも重症化する可能性、新たな変異株が小児に対してより影響を及ぼす可能性もあるため、本人や社会全体のためにも接種を前向きに検討したほうが良いと考えます。
大切なのは、あらゆる情報に惑わされずに、信頼たる情報源をあたり、正しく適切な情報を把握することです。日本小児科学会の公式サイトでは、子どものワクチン接種に関する親の心配ごとや疑問に、丁寧に解説しています。今後11歳以下が接種対象になった場合にも、同様の提言が出されるはずなので、ぜひご参照ください。
» 首相官邸 新型コロナワクチン 年齢階級別の実績
» 日本小児科学会 新型コロナワクチン〜子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方〜
新型コロナ以外に気をつけたい冬の感染症
感染症対策は、アルコール消毒だけでなく「石鹸手洗い」も!
[Q.] 冬はコロナ以外にも感染症が多い季節。気をつけたい子どもの感染症や予防策を教えてください。
[A.] 現時点では手足口病や胃腸炎などが小児の間で流行しています。
手足口病は本来夏に流行するものですが、この2年間、新型コロナ対策としての感染予防が功を奏したのか、流行がありませんでした。これにより手足口病に対する免疫を全く持っていないお子さんが増加し、ひとたび患者が出ると季節が異なっても流行してしまったのではないかと考えます。
胃腸炎については、新型コロナ対策のアルコール消毒は効きません。「石鹸手洗い」が原則で、吐しゃ物や下痢の処理には塩素系の消毒が必要になります。もしかしたら、アルコール消毒のみによる対策のため流行している可能性もあると思います。
季節とは関係なしに何らかの感染症が流行する可能性はあること、感染症によってはアルコール消毒だけでは不十分なこともあることなどを知っておくことは大切です。
またインフルエンザは、例年は年末年始ごろから流行がはじまります。石鹸手洗い・うがい・マスク・アルコール消毒、3密回避で、しっかりと予防をしていきましょう。
インフルエンザワクチンの記事はこちら
» 子どものインフルエンザワクチン(2021冬)年齢と接種回数、新型コロナとの関係など解説
コロナ禍でがんばるファミリーの皆様へ
子どもとの時間を、できるだけ安全に楽しもう
[Q.] 三児のパパである黒澤先生は、この冬休みはどのように家族で楽しむ予定ですか?
[A.] 現時点では新型コロナ感染が小康状態ということもあり、子どもたちに楽しんでもらうために小旅行を考えています。一番上の子が社会科で歴史を学習し始めたため、体感スポットへのお出かけを計画しています。
もちろん、「繁忙期を避ける、いざとなったらキャンセルも検討する」など、対策を十分取ったうえで、できるだけ安全で楽しい時間にしたいと思っています。
[Q.] 長く続くコロナ禍で子育てをする「るるぶkids」の読者に、ぜひ一言メッセージを。
[A.] かれこれ新型コロナ感染が発生してから丸2年になりますね。諸外国と比べて日本の感染がそこまでひどくならずに済んでいるのは、ワクチン接種・マスク着用・3密回避を多くの人が実行しているおかげだと思います。
一方で、大人はもちろん、子どもたちにとっても不自由が伴う生活はストレスがたまります。安全・安心に絶対はないので、適切な情報に触れ、状況を見ながら日々の小さな楽しみを見つけていくことが大切だと思います。
残念ながら新型コロナはすぐには絶滅しないと思いますが、新型コロナとうまく共存できるようになる日は近づいていると思います。その日を楽しみにしながら、一日一日を過ごしていきたいですね。
<黒澤先生の記事>
» 子どものインフルエンザワクチン(2021冬)(配信日:2021年10月19日)
» 医師に聞く、2021夏休みのコロナ対策!(配信日:2021年7月8日)
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