冬になると、北国や日本海側ではたくさんの雪が降ります。しかし、太平洋側では晴れた日が多く、あまり雪は降りません。なぜ、雪がよく降る場所とあまり降らない場所に分かれるのでしょう。そもそも、雪はどんなしくみで降るのでしょうか?ママ気象予報士の今井さんが詳しく解説します!雪の結晶を作る実験動画も、ぜひお家でお試しください。
サイエンスライター・気象予報士 今井明子さん
京都大学農学部卒。2児の母。天気の話を中心に、生き物や自然にまつわる記事や書籍を多数執筆。気象科学館の解説員や防災講師、親子向けお天気実験教室の講師なども務める。著書に、「面白いほどスッキリわかる! 世界の気候と天気のしくみ」(産業編集センター)、「こちら、横浜国大『そらの研究室』! 天気と気象の特別授業」(共著、三笠書房知的生き方文庫)などがある。
雪はなぜできるのか・なぜ降るのか?
「雪」は雨と同じで、雲の中でできる
雪が降ったら子どもたちは「雪だるまを作ろうかな。それとも雪合戦をしようかな」と大喜びですよね。この白くて冷たい雪は、雨と同じく雲から降ってきます。雲の上のほうは小さな水や氷の粒でできていますが、その中の小さな氷の粒は周りの水蒸気を取り込みながら、大きく成長していきます。これが「雪の結晶」になります。
雲から落ちた「雪の結晶」が雪になる
雲の中には上昇気流がありますが、雪の結晶がどんどん大きくなり、上昇気流の力で浮かんでいられなくなると、下に落ちてきます。これが雪です。しかし、雪の結晶が落ちる間に溶けてしまうと、雨になります。
雪だるまを作るなら、「粉雪」と「ボタン雪」のどっち?
雪にはサラサラとした粉雪と、大粒のボタン雪があります。粉雪は寒くて乾燥しているときに降り、サラサラとしているので雪だるま作りには適しません。また、積もった後に風で飛ばされて地吹雪となることがあります。一方、ボタン雪は水分を含んでいるのでくっつきやすく、雪だるまを作りやすいです。しかし、電線などにくっついてしまうと停電を引き起こすことがあります。
雪はなぜ白いのか?
雪の結晶は氷の粒です。ということは、無色透明なはずなのですが、雪は白く見えますよね。これは、小さな雪の結晶に太陽の光が当たって反射するからです。雪の結晶ひと粒ひと粒の間に空気があり、空気と雪の結晶の間で太陽の光は曲がったり反射したりします。その反射の方向がさまざまなので、白く見えるのです。これを乱反射といいます。
雪とホッキョクグマの毛は同じ構造?
これと同じ仕組みで、ホッキョクグマの毛も白く見えます。ホッキョクグマの毛は実は透明で、ストローのような構造をしています。この毛が太陽の光の乱反射によって、白く見えるのです。
世の中には、白く見えない雪もある?
世の中には、白く見えない雪もあります。厳密にいうと、雪に何らかの要因で色がつくことで、色がついて見えます。たとえば富士山のような雪を頂いた山では、夕日が当たると雪の部分が紅色に見えます。これは、夕日の赤い光が雪に当たって色づいて見えるからです。また、高山や極地では雪の上に生息する赤や緑の藻類によって雪が色づいて見えることもあります。
雪とひょうの違いとは?
夏の盛りではない季節に雷が鳴ると、大きな氷の粒がたくさん落下して、積もるとまるで雪が降ったような真っ白な風景になることがあります。この氷の粒は「ひょう(雹)」と呼ばれています。時には、カボチャのような大きなひょうが落下して屋根に穴をあけたり、頭にぶつかってけがをしたりすることもあるので、かなり厄介な存在です。
「ひょう」は、雷を発生させる積乱雲が作る
ひょうは、雷を発生させる積乱雲の中でできます。雲の中の小さな氷の粒が水蒸気を取り込んで成長すると雪の結晶になりますが、小さな氷の粒のまわりに水がつき、再び凍ると、丸い形のあられになります。雲の中でくるくると回転しながら凍るので、丸い形になるのです。
直径5mm以上のあられが「ひょう」と呼ばれる
積乱雲の中には強い上昇気流があるため、あられは雲の中で上昇したり、下降したりを繰り返します。すると長く雲の中に滞在することになり、たくさんの水をつけて大きくなります。こうして直径5mm以上になったあられは、ひょうと呼ばれるようになるのです。
雪が「降る場所」と「降らない場所」の違いとは?
日本には雪が多く降る場所と、そうでない場所があります。寒い北海道がもっとも雪が多く降るのかと思いきや、豪雪地帯として知られているのは、もっと緯度の低い新潟県などの日本海側です。しかし、同じ緯度の太平洋側ではとても雪が少ないです。なぜ、こんなに地域で雪の量に差があるのでしょうか。
日本海側は低緯度で雪が降る豪雪地帯
日本の日本海側は豪雪地帯として知られていますが、実は世界でも類を見ないほど、低緯度で雪が降る場所でもあります。これは、西高東低の冬型の気圧配置が大きく影響しています。冬になると、大陸にあるシベリア高気圧から、東の海上にある低気圧に向かって冷たい風が吹きます。これは冬の季節風と呼ばれています。
日本海の山側に雪を降らせる「山雪型」
冬の季節風は冷たく乾燥していますが、日本海を通るときに水蒸気をもらって湿り、雲になります。これはちょうど、冬に露天風呂の上に冷たい風が吹くと湯気ができるのと同じようなしくみです。この雲が、日本列島の中心付近を通る山脈を越えるときに、強制的に上昇することで発達し、雪を降らせます。
雪を降らせると再び空気は乾燥し、山から吹き降ります。こうして、日本海側には雪が降り、太平洋側には乾いた風が吹いて晴れるのです。この気圧配置のときは、とくに日本海側の山側で雪が降るので、「山雪型」のパターンと呼ばれています。
「里雪型」は日本海沿岸部に雪を降らせる
西高東低の気圧配置が少し緩み、天気図で縦じま模様の等圧線が日本海側で少し膨らんでいるときは、日本海側の山側ではなく、沿岸部で多く雪が降ります。これは「里雪型」のパターンです。このとき、日本海側の上空に寒気が入っており、雪雲は山を越えるときではなく、沿岸部で発達します。それで、沿岸部で多く雪が降るのです。
日本の太平洋側で年に数回、雪が降る理由
太平洋側では日本海側ほど雪が降りませんが、それでも1年に1~2回は雪が降ります。太平洋側に雪が降るときは、西高東低の気圧配置のときではありません。太平洋の沿岸をなめるように進む「南岸低気圧」と呼ばれる低気圧が雪をもたらします。
関東地方の「雪の予報」が当たらないのはなぜ?
関東地方の雪の予報はなかなか当たりません。雨が降るという予報だったのに雪になったり、雪が積もるという予報だったのに雨だったりします。これは、太平洋側の雪の予報が難しいからです。太平洋側の雪をもたらすのは南岸低気圧のしわざですが、日本列島からの距離、上空の冷たい寒気、湿度など、いったいどんな条件だと雪になるのかが明らかになっていないのです。
身近なものでお天気実験!雪の結晶を作ってみよう
身近なもので天気のしくみがよくわかる実験を紹介します。今回は雪の結晶を作る実験です。ドライアイスを使うので、大人の人が必ず手伝う必要がありますが、家でもぜひやってみてください。ただ、冬よりは夏のほうが空気中の水蒸気が多いため、雪の結晶が成長しやすいです。
「雪の結晶を作ってみよう!」
▼おでかけ前や自由研究に役立つ「天気のきほん」全シリーズはこちら!
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» 7月:「ゲリラ豪雨」とは?急な大雨の原因や仕組み、災害から身を守るコツ
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» 10月:「雲」の種類は10種類ある!それぞれの特徴・高さ・天気との関係、実験動画も!
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