毎年5月から7月にかけて日本にやってくる「梅雨」。子どもから「梅雨」ってなに?と聞かれたら、詳しく説明できないかも…というパパママも多いのでは?また、「梅雨」の時期は大雨による災害も発生しやすくなります。そんなとき、気象情報をどのように活用して身を守ればよいのでしょうか。「梅雨」と「集中豪雨」について、ママ気象予報士の今井明子さんに教えてもらいました!
サイエンスライター・気象予報士 今井明子さん
京都大学農学部卒。2児の母。天気の話を中心に、生き物や自然にまつわる記事や書籍を多数執筆。気象科学館の解説員や防災講師、親子向けお天気実験教室の講師なども務める。著書に、「面白いほどスッキリわかる! 世界の気候と天気のしくみ」(産業編集センター)、「こちら、横浜国大『そらの研究室』! 天気と気象の特別授業」(共著、三笠書房知的生き方文庫)などがある。
梅雨ってなに?梅雨前線が出来る仕組みをわかりやすく解説!
ちょうど初夏の頃、日本の南には暖かく湿った太平洋高気圧、北には涼しくて湿ったオホーツク海高気圧があり、その南北の高気圧に挟まれたところでは雲が発生しやすくなります。これが梅雨前線です。梅雨前線は暖かい空気と冷たい空気の勢力が同じくらいのときにその境目にでき、あまり動きません。そのため、梅雨の時期は雨の日が長く続くのです。
梅雨前線はまず、5月頃に沖縄・奄美地方のあたりにできます。季節が進むと太平洋高気圧の勢力が強まり、梅雨前線を押し上げていくので、梅雨前線は次第に北のほうへ移動していきます。梅雨前線がその地方にしばらくとどまっていて雨の日が続きそうだと、気象庁は「〇〇地方が梅雨入りしたとみられる」という梅雨入りの発表を行います。そして、梅雨前線がさらに北のほうに移動し、その地方が太平洋高気圧に覆われて夏空が広がりそうであれば、その地方の梅雨明けを発表します。
梅雨入り・梅雨明けはいつ?目安時期を参考にお出かけの計画を!
梅雨入りは沖縄地方で5月10日頃、東北北部では6月15日頃となることが多く、梅雨明けは沖縄地方で6月21日頃、東北北部では7月28日頃となることが多いです。
6月末であれば沖縄では夏空を楽しめる一方で、夏休みに入ったばかりのタイミングで東北に行っても雨ばかりということになる可能性も。夏の旅行の予定は、その地域の梅雨入りと梅雨明けのだいたいの時期を頭に入れながら計画するのがおすすめです。
ただし、梅雨入りと梅雨明けの時期は年によって異なります。とても早く梅雨入り・梅雨明けする年もあれば、なかなか梅雨明けしてくれない年もあります。ときには、梅雨入りや梅雨明けの時期がはっきりせず、気象庁から「(梅雨入りや梅雨明けの)発表なし」という年も。
参考リンク:» 気象庁ホームページ「梅雨入りと梅雨明け(確定値)」
北海道には梅雨がないってホント?
梅雨の時期の北海道は、梅雨前線の北側に存在するオホーツク海高気圧で覆われていいます。高気圧に覆われているところは基本的には雨が降らないので、北海道は梅雨がないと言われているのです。ただ、オホーツク海高気圧の空気はひんやりと湿っているため、どんより曇ってパラパラと雨が降ってくることがあります。このような天候は「蝦夷梅雨」と呼ばれています。それとは別に、最近では地球温暖化の影響なのか、梅雨前線が弱くならずに北海道にまでやってきて、7月頃に大雨となることもあります。
梅雨に集中豪雨が発生するのはなぜ?身を守るための対策ポイントは?
集中豪雨の原因とゲリラ豪雨との違い
梅雨の後半になると、おもに西日本で大雨が長時間降り続く集中豪雨が発生します。これは、梅雨前線に太平洋高気圧からの暖かく湿った風が流れ込み、前線付近で激しい雨をもたらす積乱雲が発達しやすくなるからです。
夏の晴れた日の夕方にいきなり大雨が降る「ゲリラ豪雨」と違い、集中豪雨では大雨が長時間降り続きます。大雨が長時間降り続くと、川があふれたり、道路や住居に浸水したり、がけ崩れなどの土砂災害が発生しやすくなります。大雨から身を守るには、気象情報をどのようにチェックすればよいのでしょうか。
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集中豪雨とゲリラ豪雨の違いは?
雨予報なら「今後の雨(降水短時間予報)」を確認
今後の雨(出展:気象庁ホームページ)
気象庁ホームページの「今後の雨」では、15時間先までの雨の様子がわかります。雨の強さは白から水色、濃い青、緑、黄色、オレンジ色、赤、紫の順で雨が強くなっていきます。
また、「線状降水帯」と呼ばれる、大雨をもたらす雲が線のように連なっている状態が発生しているときは、線状降水帯が赤い楕円で囲まれて表示されます。長時間、強い雨が降り続いたり、線状降水帯が発生したりしている場合は、災害が発生するかもしれません。
参考リンク:» 気象庁ホームページ「今後の雨(降水短時間予報)」
避難の判断には「キキクル」をチェック
もし、長い雨が続くのなら、災害に備えて避難することもありえます。いつ避難したらよいかという判断に役立つのが気象庁ホームページの「キキクル」です。「キキクル」には土砂、浸水、洪水の3種類があり、危険度に応じて黄色、赤、紫、黒に色分けされています。
土砂キキクル(出展:気象庁ホームページ)
浸水キキクル(出展:気象庁ホームページ)
洪水キキクル(出展:気象庁ホームページ)
色は黄色が注意報レベル、赤は警報レベルで警戒レベル3とされています。このレベルになったら、病気やけがの人、乳幼児のいる家庭など、避難に時間がかかる人は避難を始めるタイミングです。それ以外の人も、紫色で表示された警戒レベル4には避難を開始しましょう。警戒レベル5の黒が表示されるときというのは、大雨特別警報や氾濫発生情報が発表されるような状態です。ここまでくると、すでに何らかの災害が発生しているかもしれません。避難しようとするとかえって危険なので、黒が表示される前に避難するようにしてください。
参考リンク:» 気象庁ホームページ「キキクル(危険度分布)」
お天気をもっと学ぼう!今井さんおすすめスポット
熊本県防災センター(熊本県/熊本市)
梅雨末期の集中豪雨によって球磨川が氾濫し、大きな被害を出した令和2年7月豪雨をはじめ、熊本の過去の災害の経験や教訓、災害発生のメカニズム、防災の取組みなどについて学習できる施設。熊本の災害年表や災害の特徴などがわかる展示パネルのほか、風水害の様子がよくわかるプロジェクションマッピングやVRなどもあります。風水害だけでなく、地震や火山の災害についても学べます。
住所 | 熊本市中央区水前寺6丁目18番1号 熊本県防災センター1階 |
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問合先 | 096-333-2111 |
営業時間 | 9〜17時 |
休館日 | 土・日曜、祝日、年末年始(12月29日から翌年1月3日まで) |
料金 | 無料 |
予約方法 | 見学のみの場合は予約不要。20名以上の団体利用は事前に電話連絡。防災研修を希望する団体は事前予約が必要 |
アクセス | JR新水前寺駅下車、水前寺駅通りバス停から県庁方面行きバス乗車「熊本県庁前」停留所下車すぐ、路面電車「市立体育館前」停留所下車徒歩10分、阿蘇くまもと空港から空港リムジンバス「交通センター行き」に乗り、「熊本県庁前」下車すぐ |
駐車場 | 無料568台(2時間以上の利用は出庫手続きが必要) |
▼おでかけ前や自由研究に役立つ「天気のきほん」全シリーズはこちら!
» 6月:「梅雨」とは?梅雨前線が出来る仕組み・集中豪雨から身を守る方法
» 7月:「ゲリラ豪雨」とは?急な大雨の原因や仕組み、災害から身を守るコツ
» 8月:「雷」が発生する仕組みとは?雷の種類、よくある勘違いも解説
» 9月:「台風」とは?できてから消えるまでの仕組み、夏から秋に日本くる理由
» 10月:「雲」の種類は10種類ある!それぞれの特徴・高さ・天気との関係、実験動画も!
» 11月:「霧」とは?霧ができる発生条件・原因と種類を解説。雲海との違いも
» 12月:「木枯らし」とは?意味や木枯らし1号・「西高東低の気圧配置」について
» 12月:「高気圧」と「低気圧」とは?空気の力を実感できる実験動画も
» 1月:「雪」はなぜできるのか、なぜ降るのか?雪の結晶をつくる実験動画も
» 2月:「寒暖差」は季節の変わり目になぜおきる?天気予防の活用術も
» 2月:「蜃気楼」とは? 起こるしくみや見える気象条件は? 実験動画も
» 3月:「虹」はどうやってできる?七色になるしくみや虹の種類を解説
» 4月:空はなぜ青い?夕焼けはなぜ赤い?雲はなぜ白い?多彩な「空の色」のヒミツ
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