温かくなって、お出かけしやすい春。おだやかな夜風に吹かれながらの星空観察は、親子のいい気分転換になりそうです。春の星座といえば、子どもにもなじみがある北斗七星!今回は春の星座や神話、星座の探し方を日本科学未来館・科学コミュニケーターの臼田麻純さんに聞きました。
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日本科学未来館 科学コミュニケーター 臼田麻純さん
美しい天の川を海外で見たことをきっかけに、星や宇宙に興味をもつように。その後「宇宙の面白さをもっと知りたい、みんなと共有したい」という思いから、日本科学未来館の科学コミュニケーターとして勤務。おもにロケットの解説や惑星をテーマにしたナイトツアーのガイドとして活躍。お気に入りの天体は月と、木星の衛星エウロパ。
※当記事は2021年3月4日の取材に基づいています。
1.春の夜空、星の特徴は?おすすめの天気はある?
5月初旬の夜8時ぐらいに見える星空の様子です。春は空気中の水蒸気が増えるだけでなく、花粉や黄砂が降って空がかすみがち。空気が澄んでいた冬の夜空と比べると、星が見えにくくなるかもしれません。また、春の一等星は3つ。冬は一等星が7つ見えることを考えると、明るい星がぐっと少なく感じるでしょう。
ですが、春は88個ある星座のなかで大きさがTOP3のうみへび座・おとめ座・おおぐま座が見られるのが特徴です。
春の星空観察のおすすめの天気は、春は花粉や黄砂が流される、雨上がりの晴れた夜。星がどのくらい見えやすい日か調べられる、日本気象協会の星空指数も活用するといいでしょう。
なるべく空が開けた公園や広場などで、レジャーシートやメモできる筆記用具を持参して、ゆっくりと親子で寝転がって眺めてみてはいかがでしょうか?市販で入手できる星座早見表とコンパスもあると、より星を見つけやすいでしょう。
星空指数や道具など星空観察の基本はコチラ:
» 親子の星空観察Q&A(星の数は?動きは?星座って?)見つけ方や便利な道具もチェック
2.春の代表的な星座の探し方
春に観察できる代表的な星座と探し方のコツを紹介します。まずは、多くの方になじみがある北斗七星から!
まずは北斗七星から!
春の夜、頭の上を見上げてみると、片手鍋やスプーンのような形に並んだ7つ星を見つけることができます。これが北斗七星です。北斗七星は、実は星座ではなく、おおぐま座の一部で、おしりからしっぽにあたります。北斗七星は、季節を問わず一年中見ることができますが、特に春の宵の口はきれいに見えます。とても見つけやすく、また、ほかの春の星座を探す手がかりになるにもなるので、まずは北斗七星を探してみましょう。
春の大曲線(うしかい座、おとめ座)
北斗七星の持ち手から、そのカーブのままなぞって見ていくと、オレンジ色の明るい星が見つかります。うしかい座の一等星アークトゥルスです。さらに、進んでいくと青白い星、おとめ座の一等星スピカにあたります。
北斗七星からアークトゥルス、スピカを結んでできる大きなカーブは春の大曲線と呼ばれ、春の星座を探すときの定番です。
スピカからさらに進むと台形のように4つの三等星が並ぶからす座があります。
<これも知ってる?>
- 星にも夫婦がいる?!
うしかい座のアークトゥルスは麦の刈り入れ時期に見えることから「麦星」と呼ばれていました。そして、おとめ座のスピカはその輝きから「真珠星」と呼ばれることも。この2つは対の星として「夫婦星」と呼ばれることもあります。 - 星の色と温度
一等星のアークトゥルスはオレンジ色、スピカは青白い色。星の色はどうして違うのでしょうか?
それは星の表面温度によって、色が変わるのです。赤→オレンジ→黄色→白→青白と表面温度が高くなっていきます。白く輝く星の表面温度は10000℃くらいです。
ですが、意外なことに、表面温度と私たちの目に見える明るさは比例していません。地球から見ると太陽は一番明るいですが、それは地球からの距離が近いから。太陽の色は黄色く、表面温度は約6000℃で、宇宙の星のなかでは、実はそこまで表面温度は高くないのです。
春の大三角(しし座)
春の大曲線のカーブを円と見立てて、その中心あたりに位置するしし座の二等星デネボラと、アークトゥルス、スピカを結んでできるのが春の大三角です。冬の大三角、夏の大三角もありますが、春の大三角だけが二等星(デネボラ)を結んでいます。
<これも知ってる?>
- しし座には一等星のレグルスがありますが、21個ある一等星のなかで、一番暗い星。二等星のデネボラの明るさとそれほど変わりません。
レグルスはししの心臓あたりに位置していますが、そこからししの頭にかけては?マークを左右逆にしたような形をしています。
3.春の星座にまつわる神話
子どもの想像力を育み、星空をより身近に感じさせてくれる神話があります。子どもには難しい場合もありますが、そんなときは「あれ、○○の形に見えない?」と自由な発想で、子どもと一緒に物語を考えると、星を介してコミュニケーションも増えますね。
おおぐま座とこぐま座
おおぐま座の北斗七星と向かい合うようにあるのがこぐま座です。おおぐま座とこぐま座は一緒の神話で伝えられています。
女神に仕えていたカリストは、大神ゼウスとの間にアルカスという男の子をもうけます。これをねたんだ女神は、カリストを大熊に変え、森の中に追いやってしまいました。年月が経ち、成長した息子のアルカスが、森で大きな熊に遭遇します。それは母のカリストでした。そうと知らないアルカスは熊を殺そうとしてしまいます。それを見ていたゼウスは、息子のアルカスを小熊に変え、二人を星座にしたといわれています。
日ごろ、空を見上げることがないお母さん、お父さんも多いのでは? 子どもと一緒に星空観察を習慣にすると、見慣れているつもりの星や月にも、新たな発見があるかもしれません。穏やかな気候になるこれからの時期こそ、星空観察を始めるいい機会ですよ!