夏が近づくとぴょんぴょんと足元を跳ねるバッタに出会えます。なかでも、もっとも大きくてたくましいのが「トノサマバッタ」。「殿様」というカッコいい名前のとおり、素晴らしいジャンプ力の持ち主! 今回は、トノサマバッタの特徴、色の違い、生態サイクル、飼育のポイントなどを昆虫芸人・堀川ランプさんが解説します。夏休みの自由研究にもおすすめです!
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- 1.トノサマバッタの特徴は?なぜ殿様?
- └ トノサマバッタの名前の由来
- └ 高性能な体のつくりを解説
- └ オスとメスの見分け方
- └ 天敵はなに?
- 2.トノサマバッタはジャンプ力がすごい
- └ 飛ぶ距離が自慢!高さは?
- └ ジグザグ飛行で身を守る!
- 3.トノサマバッタは実は3色?
- └ 緑、茶色、色の違いは?
- └ 相変異って?
- └ イナゴとの違いは?
- └ 国内にいるバッタの種類と特徴
- 4.トノサマバッタの一生と寿命。観察時期は?
- └ 卵で冬越し
- └ 幼虫は茶色、餌はイネ科の植物
- └ 脱皮や羽化は?
- └ 成虫になるのはいつ?寿命は数ヶ月
- 5.難しい?トノサマバッタの採集のコツは?
- └ いる場所はどこ?
- └ 捕まえ方、持ち方
- └ バッタ釣りって?
- 6.飼育方法(育て方)は?
- └ 餌(食べ物)は?
- └ キリギリスに注意しよう
- 7.トノサマバッタの自由研究アイデア2
- 8.多摩動物公園で年中観察できる!
(監修プロフィール)堀川ランプ
昆虫大好き芸人。変形菌にも詳しい。日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程修了。理系の研究発表を模した白衣スタイルでおこなうフリップ芸が人気。Youtubeで「堀川ランプの昆虫列伝」を配信中。日本変形菌研究会会員。成虫の会メンバー。当記事のイラストはすべて堀川ランプさん本人のよるもの!
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1.トノサマバッタの特徴は?なぜ殿様?
トノサマバッタの名前の由来
トノサマバッタは日本に生息するバッタのなかでも、ひときわ大きな種類で、その迫力から「殿様」の名前が付いたと言われています。また、トノサマバッタには「ダイミョウバッタ」という別名もあり、どちらの名前にしても、古くから日本人に馴染みの深い大型の昆虫であったことがうかがえます。
高性能な体のつくりを解説 顔は仮面ライダーのモチーフに!
【大きな全長、脚は6本】
トノサマバッタは全長35~65㎜、ほかの昆虫と同じように頭・胸・腹の3つのパーツに分かれた体のつくりをしていて、脚の位置は右と左で3本ずつの計6本。この6本の脚のうち、後ろの2本は大きく発達していて、大きなジャンプ力を生み出します。
【翅は4枚】
翅の数は、左右2枚ずつの計4枚。前の二枚の翅はまだら模様があって細長く、後ろの2枚の翅は、前翅よりも幅が広く、薄い黄色みがかった半透明の色をしています。この後ろ翅は、飛ぶとき以外は扇子のように畳まれた状態で前翅の後ろにしまってあります。
【仮面ライダーのモチーフとなった顔】
大きく重量感のある体は迫力がありますが、卵形をした顔の上部には、クリッとした複眼(多くの昆虫にみられる、小さな目がたくさん集まって1つの目を形作っているもの)がついていて、愛嬌のある表情をしています。仮面ライダーのモチーフとなったゆえんには、この力強さと親しみやすさが関係しているのかもしれませんね。
【観察しやすい気門】
胸部から腹部にかけた体の側面には「気門」と呼ばれる小さな穴があります。これは空気を取り込んで呼吸をするための器官で、全ての昆虫に共通している器官です。トノサマバッタの場合は、中脚の上あたりにある気門が空気を取り込む時によく動くので、とても観察しやすくなっています。
【耳は腹部に!】
トノサマバッタの体には、もうひとつ特徴的な部分があります。耳の位置です。音を聞くという機能自体は人間の耳と同じですが、場所が頭ではなく、後ろ脚の付け根の少し上の腹部にあります。この耳は、普段は翅に隠れて見えない場所にあるので、トノサマバッタを捕まえたら、そっと翅をめくって観察してみましょう。
オスとメスの見分け方
下にいる大きい方がメス!交尾のときは、オスがメスにまたがります。
【メスの方が大きい】
トノサマバッタはオスとメスで体の大きさが異なります。オスは全長35~40㎜程度なのに対し、メスは全長45~65㎜ほどあってメスのほうが大きい体つきをしています。
【おしりが割れているのはメス】
体つきのほかには、おしりの先端を見てオスとメスを見分ける方法もあります。お尻を正面から見たとき、縦に割れているのがメス、割れていないのがオスです。
【鳴き声をよく出すのはオス】
また、トノサマバッタはオスもメスも後ろ脚の内側を前翅の外側にこすりつけて「キュッキュッキュッ」という鳴き声を出すことができます。オスとメスで音自体にあまり違いはありませんが、オスの方が求愛やオス同士の争いのため、鳴き声を頻繁に出すといわれています。
天敵はなに?
体の大きなトノサマバッタですが、自然界には天敵が数多く存在します。スズメバチやカマキリなどの肉食昆虫や、網を張って獲物を待ち構えるクモ。カエルやトカゲ、小鳥などもトノサマバッタを捕食します。
このように、多くの生物に日夜狙われているためか、トノサマバッタは警戒心が強く、捕まえようと近づいてもすぐに飛んで逃げてしまうことが多いです。
2.トノサマバッタはジャンプ力がすごい
飛ぶ距離が自慢!高さは?
トノサマバッタの最大の武器は、強力な後ろ脚の筋肉から繰り出されるジャンプ力!体長の数倍もの高さまで飛び上がり、一度に1m近くの距離を移動することができます。しかも、これはジャンプ力だけの話。トノサマバッタは、4枚の翅で飛行することができます。後ろ脚で地面を蹴り上げて空中に舞い上がったあと、翅を広げて羽ばたけば、なんと一度に50mもの距離を移動することができるといわれています。
バッタの仲間はみんなジャンプを得意としますが、トノサマバッタのジャンプはそのなかでも別格なのです!
ジグザグ飛行で身を守る!
トノサマバッタは、ただ飛ぶ能力が高いだけではありません。トノサマバッタは、空中でジグザクの軌道を描いて飛行します。こうすることで、鳥などの天敵が狙いを定めにくくなり、襲われた時に逃げ延びる確率が高くなるのです。厳しい自然界を生き延びる知恵は、こんな所にも隠されているんですね。
3.トノサマバッタは実は3色?
緑、茶色、色の違いは?
トノサマバッタの成虫は、個体によって体の色が異なります。多くの個体は緑色か茶色い色をしています。これは、トノサマバッタが幼虫時代に育った環境に由来するものです。
青々とした葉っぱが多い環境で育ったトノサマバッタは、その葉っぱの色に合わせて緑色に。枯草が多い環境で育ったトノサマバッタは、その枯草の色に合わせて茶色の成虫になります。このような周囲の環境に合わせた体の色のことを「保護色」といい、風景に溶け込んで天敵に見つかりにくくなる効果があります。
大多数のトノサマバッタは緑色か茶色ですが、たまに色の白っぽいトノサマバッタが見つかることがあります。これは「白化型」と呼ばれるもので、突然変異で色素を作り出す機能に異常を起こした珍しい個体です。ほかの動物では、生まれつき色素を作る能力のない個体のことを「アルビノ」と呼ぶこともありますが、トノサマバッタの白化型では、若干色素を作る能力が残っている場合があるので、厳密にはアルビノとは異なります。
トノサマバッタの相変異って?
【密度効果と相変異】
昆虫のなかには、同じ場所に住んでいる個体数の密度が上がると、生き物としての性質に影響が出るものがいます。この影響のことを専門用語で「密度効果」といいます。トノサマバッタも、この密度効果により、姿形に大きな影響の出る「相変異」という特性をもつ昆虫のひとつです。
【孤独相と群生相】
普段私達が目にするトノサマバッタの多くは、「孤独相」という形態のもので、普段は草むらでそれぞれの個体が単独で生活しています。
しかし、何らかの理由でトノサマバッタが大量発生して個体数の密度が上がると、孤独相よりも体の黒っぽい「群生相」という形態の個体がでてきます。群生相は、孤独相と比べて後ろ足は短く、前翅は長くなるのが特徴で、長距離を移動するのに適した体つきになっています。そのほか、群生相になると群れることを好んで攻撃性が増し、食べる植物の種類が増えるなど、外見だけではなく内面的な性質も変化します。
海外ではトノサマバッタに近い種類のバッタであるサバクワタリバッタの群生相が大量発生して、農作物を食い荒らす「蝗害(こうがい)」という問題もしばしば発生していますが、現在の日本では、トノサマバッタが大量発生できるほどの広大な草原と天敵の少ない環境が整っている場所が限られているので、自然環境下で蝗害が発生することも、群生相のトノサマバッタが出現することもたまにしかありません。
イナゴとの違いは?
(左)トノサマバッタの側面、(右)イナゴの側面
トノサマバッタと同じ環境に住んでいるよく似た昆虫に「イナゴ」がいます。体形だけ見るとそっくりな両者ですが、分類上、トノサマバッタはバッタ科、イナゴはイナゴ科という別々のグループに入れられています。イナゴはオスが全長16~33㎜、メスでも18~40㎜と、トノサマバッタに比べて小柄であることで見分けられますが、個体差があるため大きさだけでは見分けづらい場合もあるかもしれません。そんな時は、捕まえて、体の裏側からそれぞれの喉元を見てみましょう。イナゴにのみ、喉元に小さな突起があります。喉元の突起の有無で、確実にトノサマバッタとイナゴを見分けることができます。
また大きな違いとしては、イナゴ科のイナゴは相変異をしません。先述した、バッタが大量発生して農作物を荒らす「蝗害(こうがい)」の「蝗」の漢字は「いなご」という字ですが、イナゴは相変異をしないので、少しややこしいですね。
国内にいるバッタの種類と特徴
コオロギやキリギリスなども含めると、日本には約450種類ものバッタの仲間が生息していると言われており、その中にはトノサマバッタよりも大きなショウリョウバッタや、トノサマバッタによく似たクルマバッタなどの種類もいます。それぞれの種類の特徴を覚えて、野外で実際に観察してみましょう。大きさの違いや、生息地の違いを記録してまとめてみると、さらに面白い発見があるかもしれません。
- トノサマバッタ
オス35~40㎜・メス45~65㎜にもなる大型のバッタ。似たような大型のバッタが多いが、トノサマバッタは翅を広げた時、後ろ翅が薄い黄色をしているのが特徴。 - クルマバッタ
オス35~45㎜・メス55~65㎜。トノサマバッタと非常によく似ているが、胸部背中側のカーブが大きいことと、後ろ翅に黒い帯状の模様が入っていることで見分けられる。トノサマバッタより飛ぶ距離は短いが羽音は大きい。 - クルマバッタモドキ
オス32~45㎜・メス55~65㎜。クルマバッタ同様、後ろ翅に黒い帯状の模様が入ることに加え、胸部の背中側に白いX状の模様があることでも見分けられる。緑色の個体もいるが褐色の個体も多い。飛ぶ時は羽音をあまり立てない。 - ショウリョウバッタ
オス40~50㎜・メス75~80㎜にもなる日本最大級のバッタで細身の体形が特徴。オスとメスのサイズの差が大きい。緑色だけでなく褐色の個体もいる。オスは飛ぶ時に「チキチキチキ」と音を出すことから別名チキチキバッタとも呼ばれる。 - ショウリョウバッタモドキ
オス25~30㎜・メス45~50㎜。「モドキ」といいつつあまりショウリョウバッタとは似ていない。薄緑色の体の側面には赤茶色のラインが入る。イネ科植物がよく茂った草原に局所的に分布している。 - オンブバッタ
オス20~25㎜・メス40~42㎜。ちょっとした草むらにも生息している。オスはメスと出会うと背中にしがみつき、他のオスにとられないようにする習性がある。翅はあるが、あまり飛ぶことはない。
4.トノサマバッタの一生と寿命。観察時期は?
トノサマバッタは卵で冬越し
トノサマバッタの卵は、ソーセージのような縦長の形をしていて、ひとつひとつの卵の大きさは約5㎜程度。トノサマバッタのお母さんは、卵を50~100個程度まとめて泡でくるんだ「卵鞘(らんしょう)」とよばれる形で、土のなかに産みつけます。トノサマバッタの成虫を飼育していると、時々メスが地面にお尻の先を差し込んでいる姿を観察することができますが、これはちょうど産卵をしているところなのです。卵鞘の泡は、産卵された直後は水っぽく石鹸の泡のようですが、しばらくすると固まって、卵を乾燥や急激な温度変化から守ってくれます。
秋に地中に産みつけられたトノサマバッタの卵は、そのまま冬越しして、春になると一斉に孵化します。
幼虫(赤ちゃん)の色は茶色、餌はイネ科の植物
4~5月くらいの時期にトノサマバッタの卵は一斉に孵化(ふか)し、幼虫が地上に出てきます。生まれたばかりの幼虫は8㎜程度の大きさで、色は茶色っぽく、翅も生えていませんが、立派な後ろ脚や顔つきなど、そのほかの特徴はすでに成虫のトノサマバッタと同じものを備えています。
トノサマバッタを自宅で飼育している場合は、自然の気候に任せるのもいいですが、より孵化を促す方法としては、卵が産み付けられたケースから成虫を取り除き、1ヶ月ほど気温変化の少ない場所で保管した後、2〜3ヶ月冷蔵庫に入れて低温にさらすとよいでしょう。
卵から生まれたトノサマバッタの幼虫は、餌となるイネ科の植物の葉を食べて成長します。
トノサマバッタの脱皮や羽化は?
トノサマバッタは、脱皮を繰り返しながら成長します。脱皮は、草などの足場にぶら下がった状態で行われます。脱皮をする度に体は大きくなり、個体によっては緑色になっていきます。そして、背中には将来的に翅になる「翅芽(しが)」という器官がみられるようになります。
バッタは蛹にならずに成虫になる「不完全変態」という成長のしかたをする昆虫であり、トノサマバッタでは幼虫の期間に4回脱皮したのちに、5回目の脱皮で羽化して完全な翅が生えそろった成虫になります。
脱皮した後、トノサマバッタは抜け殻を食べてしまうことが多いので、もしも脱皮殻を見つけることができたらラッキーです。
成虫になるのはいつ?寿命は数ヶ月
トノサマバッタのメスの産卵の様子。お尻を地面にさして卵を産みます。
トノサマバッタは、地域によって成虫になる時期や産卵時期が異なります。
北海道や東北などの寒い地域では、春に生まれた幼虫が夏の終わりから秋にかけて成虫になり産卵し、その卵が冬を越すというサイクルです。
一方、関東から九州にかけて生息するトノサマバッタは、春に生まれた幼虫は初夏に成虫になり産卵。その卵は冬を越さずに1ヶ月程度で孵化。夏の草を食べながら成長し、秋にまた成虫が見られます。そして、この秋に成虫になったトノサマバッタが生んだ卵が冬を越し、1年で2回世代交代します。つまり、1年で2回成虫に会うチャンスがあるということです!
さらに、沖縄などのより温暖な地域では越冬の必要がないため、1年に3回世代交代し、1年中トノサマバッタを見られるチャンスがあるとされています。
孵化してからのトノサマバッタの寿命はおおよそ3〜4ヶ月、なかには半年近く生きる個体もあります。飼育しているトノサマバッタの場合は、餌の量や室温によって、野生のトノサマバッタとは孵化の時期や寿命が異なることがあります。
5.難しい?トノサマバッタの採集のコツは?
いる場所(住む場所、生息域)はどこ?
トノサマバッタは、河原や草原に生息しています。しかし、ただ草がたくさん生えていればいいという訳ではないようで、トノサマバッタが好むのはススキやエノコログサ(別名:ねこじゃらし)などのイネ科の植物です。これらの植物がまばらに生えている場所や、あまり高く生長していない場所によくいるといわれています。
難しい?捕まえ方、持ち方
トノサマバッタは周囲の環境と同じ色をしているため、採集する際、目で見て探すのは難しいです。よって、草むらに入って足で草を揺らし、驚いたトノサマバッタが飛び出してきたところを見つけるのがオススメです。しかし、先述したようにトノサマバッタはとにかく飛ぶ能力の高い昆虫!よって、虫取り網を用意し、飛び上がったトノサマバッタが遠くに逃げる前に網を振って捕まえるのがいいかもしれません。
捕まえたトノサマバッタを持つ時には、注意が必要です。トノサマバッタは後ろ脚の筋肉が強靭であるにも関わらず、その後ろ脚の付け根の関節はあまり頑丈にできていません。そのため、下手に脚を持つとトノサマバッタが暴れた拍子に脚が取れてしまうことがあります。なので、トノサマバッタを持つ時は頭のすぐ後ろの胸部あたりを持つのが良いでしょう。
バッタ釣りって?
トノサマバッタのオスは、メスを見つけると、交尾するために背中に乗る習性があります。この習性を利用した「バッタ釣り」という方法で、トノサマバッタを捕まえることもできます。
用意するのは、7センチほどの角材。角材を黒く塗り、糸で棒と結びつけて釣り竿を作ります。釣り竿ができたら、黒く塗った角材をトノサマバッタのいる場所の近くに投げ込み、ゆっくり揺らしたり引きずったりしてみましょう。うまくいけば角材をメスと勘違いしたオスが飛び乗ってきます。あとは慎重に糸をたぐりよせ、網で捕まえるだけ。オスが角材に夢中になっていれば、比較的簡単に捕まえることができるでしょう。バッタ釣りで捕まえられるのはオスのみで、メスには効果がないのでご注意下さい。
6.飼育方法(育て方)は?
トノサマバッタの餌(食べ物)は?
トノサマバッタの飼育は、比較的簡単です。まず大きめのケースや水槽を用意します。餌場として水を入れた瓶にさした植物と、産卵場所として湿らせた土や砂を5㎝程度入れたプラスチック容器を入れます。飼育セットはこれで完成。あとはトノサマバッタを入れるだけです。
野生のトノサマバッタの食べ物は、ススキやエノコログサ(別名:ねこじゃらし)などのイネ科の植物です。飼育する際は、近所の草むらからこれらの植物を採集してきて与えましょう。イネ科の植物は、葉が細長く、葉脈が平行に通っているのが特徴です。
イネ科の植物は水が切れるとすぐしおれてしまいます。ですので、採ってきた餌となる植物の葉は、鮮度を保つために水の入った瓶にさした状態で飼育ケースの中に入れておきましょう。どうしてもイネ科の植物の葉を用意できない場合は、応急処置としてキャベツやレタス、キュウリなどの野菜を与えることもできます。
基本的には草食のトノサマバッタですが、若干の肉食性もあります。この肉食性は特に群生相のトノサマバッタで強く見られ、狭い容器でたくさんの個体を飼育していると、共食いが発生するリスクが高まります。これを防ぐためには、容器を広くして過密にならないようにした上で、タンパク源として金魚の餌を与えるとよいでしょう。金魚の餌は、直接地面に置くとカビの原因となるのでペットボトルのキャップなどを皿にして直接地面に触れないようにしましょう。こうすることで、不衛生にならないようにできるだけではなく、餌の交換も楽になります。
餌やり以外の毎日の世話として、産卵場所の土が乾燥してきたらに霧吹きをかけて湿らせてあげることや、糞の掃除などがあります。糞の掃除に関しては、あらかじめ飼育セットとなるケースや水槽の底に紙をしいておくと、作業が楽に進められます。
キリギリスに注意しよう
トノサマバッタと同じ方法で他の多くのバッタの仲間を飼育することができますが、キリギリスを飼う時は注意が必要です。キリギリスは肉食性がとても強いので、他のバッタを食べてしまうことがよくあります。キリギリスは、なるべく1匹ずつで飼育し、ミルワームなどの生きた餌をしっかり与えて飼育しましょう。
キリギリスはバッタの仲間と比べて体の高さに対して体長が短く、髪の毛のような細長い触角をもっているのが大きな特徴です。また、メスのお尻には剣のような産卵管があります。
7.トノサマバッタの自由研究アイデア2
①バッタの飛距離くらべ(測り方、飛ばすコツなど)
トノサマバッタは飛ぶのがとても得意ですが、トノサマバッタに似たほかのバッタはどうでしょう?バッタを地面に置いて、後ろから刺激してあげるとジャンプするので、種類ごとにその飛距離をメジャーなどで計ってみましょう。1回の計測だと個体差がデータに影響し正確性に欠けることがあるので、余裕があれば同じ種類のバッタを何匹か用意して飛んだ距離の平均を出すと、より本格的な実験になります。また、ショウリョウバッタなど、トノサマバッタとは全く違う体型のバッタの飛距離データをとって、比較してみても面白いかもしれません。
②飼育観察
夏休みの始まる7月下旬は、ちょうど2サイクル目のトノサマバッタが孵化する季節!夏休み前にトノサマバッタがいる場所をチェックしておき、夏休みになったら採集して、自宅で飼育観察してみましょう。バッタを飼育する上でのメリットは、幼虫も成虫と同じ飼育セットで飼うことができる所です。成長過程や何気ない仕草を絵や写真でまとめるだけで立派な自由研究になります。脱皮する瞬間や産卵する様子は野外ではなかなか見られないので、ぜひ飼育を通じて実際に皆さんの目で見てみてください!
8.多摩動物公園で年中観察できる!
(公財)東京動物園協会
「なかなか近所でトノサマバッタを見つけられない」「もっとトノサマバッタのことを深く知りたい」という場合は、一年中観察ができる多摩動物公園に出かけてみましょう!
昆虫園入口では、特大のバッタオブジェがお出迎え。卵から幼虫の1齢、2齢、3齢、4齢、5齢、成虫と、トノサマバッタの成長段階をわかりやすく展示。群生相と孤独相を見比べることができ、白化型を展示していることも。
トノサマバッタのほかにも、ハキリアリやヘラクレスオオカブト、数々の蝶が舞う大温室など、さまざまな昆虫が楽しめます。
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