昆虫採集といえば夏のイメージがありますが、秋も昆虫採集が楽しめます!実は、夏のカブトムシやクワガタと並んで、昔から親しまれてきた人気の昆虫は「鳴く虫」。秋は、鳴く虫たちが大活躍の季節です。種類や鳴き声、鳴く虫の代表格であるスズムシとコオロギの採集や飼育のポイントをご紹介します!昆虫芸人として人気上昇中の堀川ランプさんの解説&イラストです。
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(監修プロフィール)堀川ランプ
昆虫大好き芸人。変形菌にも詳しい。日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程修了。理系の研究発表を模した白衣スタイルでおこなうフリップ芸が人気。Youtubeで「堀川ランプの昆虫列伝」を配信中。日本変形菌研究会会員。成虫の会メンバー。当記事のイラストはすべて堀川ランプさん本人のよるもの!
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秋の鳴く虫、種類と鳴き声は?
「虫」は、実は「秋の季語」なのをご存知ですか?俳句では虫といえば「秋の鳴く虫」をさします。さらに、スズムシ・コオロギ・キリギリスといった虫の個々の名前も、すべて秋の季語です。昔から鳴く虫たちが日本人に親しまれ、愛されてきたことが伺えますよね!それではまずは、鳴く虫の代表的な種類と鳴き声をご紹介しましょう。
スズムシ:♪リーンリーンリーン、リンリンリン
鳴く虫の代表格いえばスズムシ。漢字で書くと「鈴虫」。名の通り、鈴のような美しい鳴き声です。最近はペットショップやホームセンターで売っているのもよく見かけますね。スズムシは、野生では自然が豊かな草原や河川敷に生息しています。ススキが生い茂っている場所も見つかる可能性大です。
鳴き声は、飼育しているものは「リーン・リーン」と鳴くことが多いですが、野生では「リンリンリンリン…」と鳴くことも。飼育されているスズムシは、常に近くにメスがいるので、メスにプロポーズする鳴き声「リーンリーン」で鳴くのですが、野生ではメスが近くにいないので、「僕はここにいるよ!」と知らせて近くに呼び寄せる鳴き声「リンリンリンリン」なのです。
コオロギ :♪コロコロリー、リッリッリッ、リーリーリー
スズムシと並んで鳴く虫の定番。現在日本には31種類のコオロギがいると言われています。なかでも、身近で採集でき、飼育も簡単なのはこの3つです。
- 大きな体で「コロコロリー」と鳴くエンマコオロギ
- 頭が平たく「リッリッリッ」と鳴くオカメコオロギ類
- 体はそこまで大きくないものの喧嘩っ早くて「リー・リー・リー」と鳴くツヅレサセコオロギ
いずれも、公園や河川敷など、身近な緑のある場所にいます。ちなみに、最近、昆虫食として話題の餌用コオロギは、上記とは別の種類で、限られた地域(主に海外)にしか生息していないので、身近で見かける機会はほぼないでしょう。
キリギリス :♪ギース、チョン!
かの有名童話では「歌ってばかりいる怠け者」として登場するキリギリス。実は近年、西日本と東日本で、生息するキリギリスが別種類であることが判明。最新の図鑑では、「ニシキリギリス」「ヒガシキリギリス」という名前で紹介されています。昔から日本で親しみ深い昆虫でも、未だに新しい発見があるのも昆虫の面白さ!どちらの種類も草むらや河川敷に生息し、「ギース、チョン!」と鳴くのですが、若干リズムが違うとされています。聴き比べてみたいですね。
ウマオイ:♪スイッチョン
この特徴的な鳴き声は、誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?鳴き声そのままに「スイッチョン」と呼ばれることも多いですね。
木の多い環境に暮らす「ハヤシノウマオイ」と、ひらけた草むらに暮らす「ハタケノウマオイ」の2種類に分けられています。外見の違いはあまりないですが、ハタケノウマオイの方が鳴く時のリズムが早いです。
アオマツムシ :♪リーリー
木から大きな「リーリーリーリー」という声が聞こえてきたら、それはアオマツムシ。木の上で生活し、大きな声で鳴くのが特徴です。都市部の街路樹のような、ちょっとした緑にも生息していますよ。
採集の季節はいつ?
鳴き始める時期
秋の鳴く虫たちの美しい音色は、実は翅(はね)をこすりあわせている音。コオロギやスズムシは、5月頃に卵から孵化して8月中旬頃から成虫になりますが、幼虫の頃はまだ羽が未発達なので、鳴きはじめるのは成虫からです。しかし、彼らは暑さがとても苦手で、気温が高いとあまり鳴きません。夏の暑さが和らぎ涼しくなってくる8月末や9月上旬頃、夕方の時間帯以降に美しい鳴き声がたくさん聞けるようになります。
採集はいつがおすすめ?
秋の虫は10月下旬まで鳴いているものがほとんどです(地域や種類よっては11月上旬まで鳴いていることも)。寿命は、鳴き始めて2ヶ月程と言われていますが、鳴いているうちに羽が擦れてボロボロになったり、仲間に翅をかじられてしまったり、交尾や産卵で体力を消耗し力尽きてしまうことも多く、元気でいられる期間は意外に短いです。ですから、採集は、鳴き始めの時期にするのがおすすめ。家で鳴き声を楽しませてもらったあとも、つがいで飼育した場合は、土に産卵している可能性も。卵を大事に育てれば、翌年の春には新しい命に会うことができます。
スズムシ&コオロギの採集の仕方
場所と時間帯
鳴く虫は、鳴き声がしたらそこにいる証拠。公園や庭、原っぱなど、身近な「草むら」で、耳をすませてみてください。キリギリスは昼でも鳴いていますが、スズムシとコオロギは夕方から夜にかけて鳴くことが多いです。
鳴き声が聞こえたら、虫を驚かさないようにゆっくりと声のする方へ近づいて探します。スズムシとコオロギは、地表近くや石の下にいることが多いです。鳴き声を頼りに探しましょう。
持ち物は、小さめの虫取り網
鳴く虫は、すばしっこい上に脚や触覚が取れやすいので、強くつかむと弱ってしまうことがあります。ですから、素手で採集するよりも、100円ショップなどで手に入る小さめの虫取り網で捕獲するのがオススメです。
実録!探し方&捕まえ方のポイント
実際に、秋の昆虫採集に出かけてみました!2020年9月1日、新田わくわく水辺広場(東京都足立区)のレポートです。
夕方、日が落ちてだいぶ涼しくなった時間帯。お!草むらから鳴き声が♪
鳴き声を頼りに、そっと近づき、草むらをかき分けて……虫の姿が見えたら、網を一気にかぶせます。
見つかったのは、ツヅレサセコオロギ!
小さなマダラスズ!
エンマコオロギのオス!
エンマコオロギのメスもいました!
多くの鳴く虫は、形の違いはありますが、産卵管の有無でオスメスの判別ができます。
<鳴く虫の採集のポイント>
- 虫を見つけたら、網から直接カゴに入れましょう。特に子どもは力加減が難しいので、直接虫にさわると触覚や翅がとれてしまったりします。翅がとれてしまうと、鳴けなくなってしまうので要注意です!
- 多数とれると嬉しくなり全て持ち帰りたくなりますが、カゴの中で共食いをしたり、鳴き声が夜うるさくて眠れなくなったりも。たくさんとれても、数匹を残して逃がしてあげるようにしましょう。
スズムシ&コオロギの飼い方
お部屋づくり
飼育ケースを用意し、ホームセンターなどで売っている赤土を5センチくらい敷きます。
- スズムシ:止まり木になる木の板を縦におきましょう。
- コオロギ:隠れ家となる石や木の板を地面に伏せておいてあげるのがおすすめです。
エサのあげ方
エサはナス・キュウリ・カボチャなどの野菜に加えて、煮干しや金魚の餌などでタンパク質を補給するのがgood。このとき、餌を土の上に直接置くとカビの原因になります。つまようじを刺したり、ペットボトルのキャップの上にのせるなどして、直接地面につかないようにすると良いですよ。
飼育ケースの置き場所は?
家の玄関や床など、気温の変化が少ない日陰、涼しい場所で管理して、土が乾いたらたまに霧吹きで湿らせてあげましょう。うまくいけば、卵が地中に産み付けられ、翌年春に幼虫が生まれます。
子どもに教えたい!鳴く虫 Q&A
Q.鳴き声に意味はあるの?
A.ほとんどの鳴く虫は、オスだけが鳴いています。メスへのプロポーズ、メスに自分の存在を知らせるほかに、オス同士でケンカする時に鳴く種類もいます。同じように聞こえても、時と場合で鳴き方を変えているんですよ。
Q.鳴く虫は、いつの時代からいるの?
A.奈良・平安時代にはすでに鳴く虫を楽しむ文化があり、万葉集や百人一首にも、秋の鳴く虫が詠まれています。江戸時代頃には、鳴く虫を飼う専用の虫かごが作られたり、鳴く虫を売る業者がいたそうですよ。また、虫の鳴き声を風流に感じるのは日本人だけ、という説もあります。秋の鳴く虫は、四季がある日本ならではの楽しみなのかもしれませんね。
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