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子どもに人気のお仕事に注目!|絵の先生(あきやまかぜさぶろうさん)

あきやまさんが手がけた本の数々

今井夕華のアイコン今井夕華

みなさんのお子さんは、どんな夢をもっていますか?
野球選手に宇宙飛行士、ケーキ屋さん、漫画家、今はYouTuberも人気ですよね。
このシリーズでは、子どもが憧れている職業、きっと興味がわくような注目の職業に就いた人にインタビュー。子どものときにどんなことが好きだったのか、どんな生活をしていたのかなどを伺いながら、今に至るまでのエピソードをたどります。気になるお仕事内容もたっぷり紹介!
第8弾は、絵の先生をしているあきやまかぜさぶろう(さんです。絵を描くことにコンプレックスのある子が楽しんで描けるようになるメソッドを生み出したきっかけや、コツなどを教えていただきました。

あきやま かぜさぶろうさんあきやま かぜさぶろう
1948年長崎県生まれ。1971年に初出品作品で二科展の特選を受賞し、翌年には二科展の銀賞を連続受賞。○△□の組み合わせで形をとらえて絵を描くメソッドをまとめた『1日10分でえがじょうずにかけるほん』(講談社)が、シリーズ累計100万部を超えるベストセラーとなる。『1日10分で地図をおぼえる大きなパズル』『1日10分で どうぶつが かけるほん』(JTBパブリッシング)など著書多数。現在は画家活動をしつつ、保育園・幼稚園児や小学生に絵画指導を続けている。

目次(index)


どんな仕事をしているの?

あきやまさんは、画家活動をしながら保育園・幼稚園児や小学生に絵画指導をしている絵の先生です。○△□の組み合わせで形をとらえて絵を描くメソッドをまとめた『1日10分でえがじょうずにかけるほん』(講談社)がシリーズ累計100万部を超えるベストセラーとなり、2021年12月には『十二支のおはなしと十二支がかけるほん』(JTBパブリッシング)が発売されます。

今回はあきやまさんのつくった絵本を囲みながら、るるぶKids編集部でたっぷりお話を伺いました!

あきやま かぜさぶろうさん

絵を描くことに夢中だった幼少期

―― あきやまさんは、小さい頃から絵がお好きだったのでしょうか?

あきやま:小学生の頃から絵だけは得意でした。授業中も話を聞かず、絵ばかり描いていたので、先生に怒られることもありました(笑)。

―― 当時はどのような絵を描いていたのか教えてください。

あきやま:漫画の真似をしていました。ストーリーはそっちのけで、とにかく絵に夢中で。そのおかげで、形を正しく捉えることができるようになり、基本的なデッサン力が身に付いたんじゃないかなと思います。

―― 勉強についてはいかがでしたか?

あきやま:中学生の時、理科の宿題が市の教育委員会で賞をとったんです。先生も認めてくれて、小学生の頃には全くできなかった勉強が、そこからは楽しんで取り組めるようになりましたね。

あきやまさんがその場でスラスラと描いてくれた絵

あきやまさんがその場でスラスラと描いてくれた絵。はみ出していても、白い部分が残っていても大丈夫。形や色がお手本と違っていても、子どもの表現を尊重するのがポイントだそう。

―― 小さなきっかけで、勉強を好きになることができたんですね。その後はどのような進路を選ばれたのでしょうか。

あきやま:商業高校を卒業して、石油関係の会社に就職しました。その頃も絵を描き続けていたのですが、なかなか時間がとれず。仕事と絵の両立をするために、まとまった時間で休みがある東京消防庁での仕事を始めました。

―― 消防庁でお仕事されていたとは驚きです!

あきやま:最初は消防車に乗るところから始まり、事務職や管理職を経て約13年ほど勤めました。働きながら絵を描き、二科展という展覧会で賞を受賞することもできたのですが、より本格的に絵を描くため、退庁する道を選びました。

―― 金銭面はどうしていたのでしょう?

あきやま:やはり絵だけで食べていくのは難しく、物流会社やアパレル企業でも仕事をしました。仕事後に絵を描く時間が何よりも楽しみで。そのために働いているんだ、と目的もはっきりしていたので、何事も苦ではなかったです。

あきやま かぜさぶろうさん

きっかけは息子の描いた絵

―― さまざまなお仕事をしながら、絵を描き続けていたあきやまさん。その後、本づくりを始めるきっかけはなんだったのでしょうか。

あきやま:ある日、息子が通う幼稚園に送り迎えに行ったんです。そこで見た息子の絵にとても驚いて。「お母さんを描いた」と言うけれど、大きな画用紙には一本の線があるだけでした。それを見て、絵がうまく描けない子どもは、形を捉えることが苦手なんだ、と気付いたんです。その日から「ちょうちょは三角2つだよ」など、今出している本と同じような方法で、息子に絵を教え始めました。

―― 実際の反応はいかがでしたか?

あきやま:しばらくして、幼稚園の先生に「お子さん絵がうまくなりましたね!絵画教室に通い始めたんですか?」と言われました。それで自分が教えたと話をしたら、他の子どもにもぜひ教えて欲しいということになって。

―― それが、絵画教室のスタートだったんですね。

あきやま:教えていくうちに、どの子も絵が上達していきました。そのときに、宿題として出したワークブックが評判になり、本の出版の話へとつながっていったんです。

絵画教室の様子

絵を楽しむためのコツを伝える

―― デビュー作の『1日10分でえがじょうずにかけるほん』はどのような思いでつくられたのでしょうか?

あきやま:絵画教室をする中で、絵にコンプレックスを持つ子どもをたくさん見てきました。クレヨンを折ったり、紙をビリビリに破く子もいれば、下手な絵を笑われるのが怖い、という子もいます。そういった子ども達は、実は「絵が描けない」のではなく、「絵の描き方がわからない」だけだったりする。コツを教えてあげさえすれば、楽しんで絵が描けるようになる可能性があるんです。それを本などを通して伝えていきたいと思っています。

―― まずは絵を好きになって、楽しんで描いてもらいたい、ということなんですね。

あきやま:先生や親御さんの中には、子どもの絵は自由であるべき、という意見もあるので「えがじょうずにかける」というワードには、出版前から賛否両論ありました。ただ僕がここで伝えたい「じょうず」は、子どもが言われたら嬉しい、褒め言葉の「じょうず」。子どもが絵を苦手にならないための本になったら良いなと考えています。

あきやまさんが手がけた本の数々

あきやまさんが手がけた本の数々。みなさんも一度は見かけたことがあるのでは?

―― こちらも大人気!『1日10分でちずをおぼえる絵本』(白泉社)の中では、都道府県の形を様々なモチーフに見立てていますよね。

あきやま:これは、何度も幼稚園に通って、園児と一緒につくっていきました。例えば「鳥の形は群馬県」と復唱して、県のシルエットを見せたときに、鳥のイラストを覚えているか。クイズで確かめて、覚えられなければ違うモチーフを考え直す。それを繰り返して、完成するまで実は2年くらいかかっています。

―― 一度覚えたら忘れない理由は、そのような工程があったからなんですね!

『1日10分ちずをおぼえる大きなパズル』(JTBパブリッシング)

鳥の形は群馬県、自動車の形は埼玉県、めだかの形は東京都……。自分が住んでいる場所はなんの形? 『1日10分ちずをおぼえる大きなパズル』(JTBパブリッシング)より。

仕事道具って?

―― 仕事道具についても教えてください。

あきやま:普段はリビングにパソコンを置いて作業しています。ペンタブは使わず、illustratorというソフトの「パス」で描いています。

―― 1日のスケジュールはどのような感じですか?

あきやま:夜中3時頃に寝て、朝は10時くらいに起きるという夜型の生活です。基本ずっとリビングで作業しているので、夕方になると近所を散歩するというのが日課になっています。

パソコンでイラストを描く様子

―― すべてお一人でやっているのでしょうか?

あきやま:最近は、大学生になった息子と共同でつくっているんです。「今回はこんな感じでつくろうか」と私が絵を描いて、文章を彼に書いてもらって。本づくりのきっかけをくれた息子と、こうして一緒に本をつくれる日が来るというのは、なんとも感慨深いですね。あのとき息子の絵が下手でよかったな、とちょっと思ったりしています(笑)。

新作の干支をモチーフにした絵本の原稿

新作の干支をモチーフにした絵本の原稿。左側の絵をあきやまさん、右側の文章を息子さんが手掛けている。

パーツが理解できれば、形はバラバラでも大丈夫

―― 子ども達に絵を教えるとき、気をつけていることはありますか?

あきやま:「このくらい大きく描こうね」など、簡単なヒントだけ与えて、あとは自由に描いてもらっています。色塗りのときも「自分の好きな色で塗ってね」と伝えるようにしていて。りんご=赤、ではなくて、ピンクでも青でもいい。その一言で、どこか縛られていたものが解放されて、子ども達も変わっていきます。

―― 子ども達の想像力や個性も大切にしているんですね。

神楽坂でのイベントの様子

神楽坂でのイベントの様子。あきやまさんと子ども達が一緒になって、50mほどの大きな紙をカラフルな絵で彩っていく。

―― ○△□の組み合わせで形をとらえて絵を描く、あきやまさんのメソッドについても教えてください。

あきやま:いくつのパーツからできているのか、それを理解してもらうことを大切にしています。たとえばキリンなら、頭・首・体・足の4つのパーツ。キリン全体を見ていると複雑で難しいですが、こうしてパーツごとに分ければ、どのような構造かが理解できるんです。

あきやまさんが描いたキリンの絵

―― 知らず知らずのうちに、絵を描くことでものを捉える力が鍛えられていくんですね。

あきやま:そうですね。パーツさえ理解できれば、子どもが1人でも描けるようになります。頭の中で思い出しながら描くと、自分なりの形に変わっていったりしますが、それでも不思議とキリンに見えるんですよね。頭が四角くても、足が短くても大丈夫。キリンが描けた!ということが、子どもの自信につながります。

スタッフの子どもが、本を参考にして実際に描いたキリン

スタッフの子どもが、本を参考にして実際に描いたキリンがこちら。模様や表情に子どもの独創性が現れている。親御さんは口出ししたくなるところをグッと我慢して見守ることが大切かも?

―― 昆虫を描くのはより難しそうです。形を捉えるコツはありますか?

あきやま:たとえばクワガタだと、頭は四角、胸も四角、羽は縦にぐるりーん。足は、横に描いて上、残りは横下、横下、と唱えながら描いていきます。

クワガタの絵を描く様子

―― おお!これだけでもクワガタに見えます。

あきやま:こうやって描いてみると、クワガタの構造が自然とわかるようになりますよね。足の向きについても、描きながら「木を掴むために最初は上に、他は体を支えるために横下に」と仕組みを教えることも。

―― 仕組みと合わせて教えることで、より理解が進んでいくんですね。

あきやま:ある子どもはこれを描いた後に図鑑を見て、足がもっと立体的で、爪もあることに気付いたんです。次に書いたものはこんなふうに変わりました。形を理解してから、改めて観察すると、自分なりの新しい発見がある。それが子ども達の喜びや満足感につながっていきます。

図鑑を参考にして、よりリアルに変身したクワガタの絵

図鑑を参考にして、よりリアルに変身したクワガタ。固定概念に縛られない色づかいもまた魅力的。

―― 少しのポイントを押さえるだけで、どんな子どもも素敵な絵が描けると教えてくれたあきやまさん。ぜひ皆さんもお子さんと一緒に、楽しんで絵を描いてみてくださいね!

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