冬は多くの昆虫たちが眠る季節。さびしく思っている昆虫キッズも多いかもしれませんね。「そういえば、クワガタの幼虫は朽木の中で眠っているらしいけど、本当にいるのかな?」そんな子どものひと言から、お散歩がてら近所の雑木林へ。冬のクワガタ幼虫採集レポ-トを、昆虫芸人・堀川ランプさんのタメになる解説つきでお届けします。
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(監修プロフィール)堀川ランプ
昆虫大好き芸人。変形菌にも詳しい。日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程修了。理系の研究発表を模した白衣スタイルでおこなうフリップ芸が人気。Youtubeで「堀川ランプの昆虫列伝」を配信中。日本変形菌研究会会員。成虫の会メンバー。
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冬のクワガタ幼虫採集、持ちものと時間帯
持ちものは、家にあるもので対応
用意したのは「スコップ・汚れてもいい軍手・採集した幼虫を入れるケース」の3つ。ケースは、虫カゴのほか、100均などで売っているプラスチックケースや、お弁当などに使うプリンカップでもOK。家にあるものでそろえました。
時間帯は、キッズが元気な日中OK!
夏のクワガタ採集は、夜から早朝にかけての時間帯が適していますが、その点、冬は虫たちがずっと眠っているので、時間は問いません!これは子どもにはとても嬉しいところ! 思い立ったらすぐ行けます。もちろん、日中といえども真冬なので風邪をひかないように防寒をして、出かけましょう。
【教えて!ランプさん】
朽木に空いた穴などの細かい部分をほじるのに、マイナスドライバーを持参するのもおすすめです。
クワガタの幼虫がいる場所は?探し方のポイント
コナラ・クヌギの木
クワガタの大好物であるコナラやクヌギの木がある近所(首都圏近郊)の雑木林へ行ってみました。剪定・除草された木草が、ところどころに積まれて残されていて、幼虫採集にはもってこいの環境!
【教えて!ランプさん】
クワガタの産卵場所は、夏に成虫がいた場所に近いことが多いです。夏にクワガタ採集したことがある公園などの周辺は可能性大。できるだけ、コナラやクヌギ、ヤナギなどの広葉樹がたくさん生えている場所がよいでしょう。
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朽木を探せ!
クワガタの幼虫は、生きた木の幹にはいません。朽ちた材や腐葉土をエサにして冬眠しています。このような倒木や立ち枯れの木は探しどころのひとつ。
剪定された朽木や落ち葉のたまり場もポイント。木をひっくり返してみると…
おーーーっと……違う幼虫でした。
【教えて!ランプさん】
これはヒラタムシの幼虫かな?! ヒラタムシの幼虫は、朽木の隙間や木の皮の下に住んでいて、ほかの種類の幼虫をエサにして生活しています。クワガタの幼虫と一緒に採集してしまわないようにしましょう!また、コメツキムシという幼虫もクワガタを食べてしまうので要注意。
コメツキムシは、細長くてツルツルした飴色または茶色の体をしています。
朽木の裏を探してみたら……おおおおおお!!! クワガタの幼虫発見!!!!!!!
なんと成虫も発見!コクワガタがいました。起こしてごめんね。
同じ朽木に幼虫と成虫がいるケースも! (子どものテンションMAX!!)
【教えて!ランプさん】
カラカラに乾いた朽木ではなく、ほどよく湿った朽木がポイント!落ち葉などと一緒にドサッと積まれた朽木の裏側は狙い目です。湿った朽木なら、特別な器具を使わなくても、木の皮がめくれます。工具などで木を傷つけることはなるべく避けましょう。
最近は、自然環境のために、伐採・剪定した朽木や落ち葉をきれいに撤去せず、あえて残している場所もあるそうなので、そのようなところは特におすすめです!
朽木の場所によって、クワガタの種類が違う!
今回は、コクワガタの幼虫3頭と、成虫1頭を採集できました。クワガタの種類によって、好む場所の違いがあるようです。
【教えて!ランプさん】
首都圏近郊の雑木林や公園などで見つかる可能性が高いクワガタは、コクワガタ、ヒラタクワガタ、ノコギリクワガタが挙げられます。
<コクワガタ、ヒラタクワガタ>
朽木の上の方や中心部を好みます。今回のような、剪定された朽木に潜んでいる可能性も高いです。特にコクワガタは個体数が多いので、首都圏でも比較的見つけやすいでしょう。小さいながらもフォルムがカッコよく、飼育もしやすいので、初めての幼虫採集にはおすすめですよ!
<ノコギリクワガタ>
朽木の下の方や、地面に埋まっている部分など、水分が多い場所に潜んでいる可能性が高いです。地面に埋もれているようなボロボロの朽木があれば、その周辺を探してみましょう。朽木をエサにしているので、朽木から離れた地中深くには、クワガタの幼虫はほとんど住んでいません。
オオクワガタ・ミヤマクワガタは、自然豊かな山間地でないと難しいかと思います。
クワガタの幼虫の採集・飼育の仕方
腐葉土も一緒に持ち帰ろう
幼虫を傷つけないよう、やさしく採集し、腐葉土や朽木のかけらも一緒に入れて持ち帰ります。
幼虫飼育は1頭ずつ!
自宅で、1頭ずつ個別のケースに移します。持ち帰った腐葉土と、市販のクワガタ用の幼虫マットを入れました。(ケースは家にこれしかなかったため大きいですが、もっと小さいものでもOK)。
【教えて!ランプさん】
- 幼虫飼育は1頭ずつ!
クワガタの幼虫は、複数頭をひとつのケースで飼育してしまうと、お互いに成長を妨げてしまうほか、1頭が病気になってしまった時にほかの幼虫にもうつってしまうことがあるのでNG。1頭ずつ分けましょう。 - 急な環境変化に慣れされよう
幼虫にとっては、今までの気持ちよく眠っていた場所から、急に別の場所に移されたわけですから、なるべくストレスを軽減させてあげるために、採集した場所の腐葉土を入れてあげましょう。 - 腐葉土→幼虫用マット→幼虫の順に
クワガタの幼虫は容器の底から食べ始めることが多く、また元いた場所の固さに近づけてあげるためにも、容器の底にまず腐葉土をつめましょう。次に、幼虫用マットを8割ぐらい入れて指や棒で押し固めたあと、幼虫を入れ、さらに上から優しくマットをかぶせてあげると、とても快適な環境になるでしょう。 - 容器の蓋には通気口を!
腐葉土は発酵して容器の中の酸素を消費してしまうので、容器の蓋に小さな空気穴を開けるのを忘れずに! - マットを手に入れよう
クワガタやカブトムシの飼育でよく聞かれる「マット」というのは、クヌギなどの樹木のチップを発酵させて作ったもので、幼虫の成長に必要な栄養がたっぷり入っています。昆虫専門店やホームセンター、ネットで買うことができます。幼虫用と成虫用があるので、間違わないように要注意!
成虫飼育は再冬眠できる環境作りを
成虫は、冬眠していたところを起こしてしまったので、もう一度冬眠できる環境をケースに作ってあげました。成虫用マットと、朽木や枯葉を入れました。今は木の下でじっとしています。
【教えて!ランプさん】
- 成虫には成虫用マットを
成虫用マットはクヌギなどの樹木のチップを発酵させずそのまま使用したものか、少しだけ発酵させたものが多く市販されています。そのため、発酵の進んだ幼虫用のマットと比べて土の匂いが少ないものが多いです。また、成虫は土ではなく樹液をエサにしているため、温かくなってきたら昆虫ゼリーを置いてあげるとよいでしょう。 - 温度管理に気をつけて!
それまでは外で冬眠していたわけですから、暖かい室内環境ではなかなか休めないかもしれません。急な環境変化を与えないよう、玄関などの気温が低い場所で飼育するなど工夫をしましょう。
いつ成虫に?冬から夏までの過ごし方
さて、運よくクワガタの幼虫を採集できたのものの、ここから夏までどう過ごせばいいのでしょうか?
【教えて!ランプさん】
- マットが乾いたら霧吹きを
飼育ケースは、玄関など直射日光の当たらない涼しい場所で保管を。マットが乾いて来たら、定期的に霧吹きで湿らしてあげましょう! - こんな様子には注意を
採集から数か月経過して、幼虫がマットの上の方でずっとうろうろするようになったら、腐葉土が劣化している可能性があります。マットを入れ替えてあげましょう。空間を作ってじっとしているようなら、それは蛹になる準備中なのでそっとして観察を! - コクワガタやノコギリクワガタは、そのままマット飼育を
幼虫を大きく育てるため、キノコをマットに植えつけて栄養価を高めた「菌糸瓶:きんしびん」というものも市販されています。しかし、コクワガタやノコギリクワガタは、普通の昆虫マットだけでも十分育てることができます。ヒラタクワガタの場合、幼虫が丸まった時のサイズが大体500円玉程になったら、菌糸瓶に移しかえるといいでしょう(あまり小さいうちに移すと、幼虫が菌に負けてしまうことがあります)。 - 今年の初夏(または翌年の初夏)には蛹に!
飼育温度にもよりますが、コクワガタは1年、ヒラタクワガタは1~2年、ノコギリクワガタは2年程度で卵から成虫になります(※)。どの種類も、夏に活動している成虫が卵を産むため、冬に見つけられる幼虫は少なくとも孵化してから3~4ヶ月経っているものになります。ですので、採集した幼虫は運が良ければ次の初夏、遅くとも翌年の初夏には、自分で土の中に作った空間(蛹室:ようしつ)の中でじっとするようになり、蛹になります!
(※)特別寒い地域ではない、一般的な温度条件下で人間が飼育管理した場合の目安 - 蛹から成虫へは1ヶ月
蛹から成虫になるまでは1ヶ月程度ですが、成虫になってすぐはあまり動き回らず、エサも食べません。これは体が成虫になっていても体の中はまだ完全に成熟しきっていないためです。体の中がちゃんと成熟するまでは、ほんの少しのエサだけを入れておいてあげて、食べ始めるまで気長に待ちましょう。秋に成虫になったクワガタは、そのままエサを食べず冬眠に入り、次の夏から活動を始める場合もあります。
クワガタの寿命は?
採集・飼育をした昆虫は、責任を持って最後まで飼うことがお約束。幼虫から蛹を経て、成虫となったクワガタの寿命は、どのくらいなのでしょうか?
【教えて!ランプさん】
個体差や生育環境による違いはありますが、クワガタは比較的寿命が長い昆虫です。体が成熟して餌を食べるようになってからの成虫の寿命の目安は、コクワガタ・オオクワガタ・ヒラタクワガタは2〜3年、ノコギリクワガタ・ミヤマクワガタは3〜4ヶ月前後です(いずれも飼育管理の場合)。
今回採集したコクワガタの幼虫・成虫が、どのように成長していくのか、またぜひレポートをしたいと思います(» レポートはこちら)。最後に、クワガタ採集のお約束です。昆虫が好きだからこそ、自然や命のことを考えながら、ルールを守って楽しみましょう!
<幼虫採集のお約束>
● 朽木をいえども、必要以上に木を削ったり、傷つけたりしないこと。また、朽木をひっくり返したり移動をしたりした場合は、必ず元に戻しましょう。そこは昆虫たちが生活をしている場所であることを大切に考えましょう。
● 朽木で冬眠している昆虫は、クワガタだけではありません。スズメバチの女王やムカデなども朽木の隙間で眠っていることがあります。もし見つけてしまったら、下手に刺激せずにそっと朽木をもとの場所に戻して、別の朽木でクワガタ探しを。
● 採集・飼育した昆虫は、最後まで責任をもって飼いましょう。一度人間が飼育した昆虫を途中で放すことは、昆虫にとってもストレスですし、自然環境に悪影響を与えてしまう可能性があります。
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子どもが昆虫採集や飼育をしたがっても、親である自分は虫がこわくて触れない…。そんなママパパたちのリアルな虫問題を解決する1冊!「親パート」「子どもパート」に分かれた前代未聞の二部構成+「3大特別付録 自由研究セット」つきで、親子の楽しい採集・飼育体験を徹底サポートします!
書名 | 『るるぶKids こわくない!カブトムシ・クワガタの採集と飼育』 |
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定価 | 1650円(10%税込) |
判型 | AB判、本誌96ページ(ソフトカバー)、別冊付録32ページ(いずれもオールカラー) |
発売日 | 2023年6月23日(金) |
発行 | JTBパブリッシング |
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