「でーんでんむーしむし かーたつむりー♪」と有名な歌の題材にもなっているカタツムリ。私達に身近な生き物のひとつですが、食べ物や殻のヒミツなど、意外と知らないその生態を昆虫芸人の堀川ランプさんが詳しく解説!家で飼ってみるのも面白いですよ。
(監修プロフィール)堀川ランプ
昆虫大好き芸人。変形菌にも詳しい。日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程修了。理系の研究発表を模した白衣スタイルでおこなうフリップ芸が人気。Youtubeで「堀川ランプの昆虫列伝」を配信中。日本変形菌研究会会員。成虫の会メンバー。当記事のイラストはすべて堀川ランプさん本人のよるもの!
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カタツムリの興味深い生態
カタツムリは暗くてジメジメした環境が好きな生き物です。普段は落ち葉の下や木の根元近くに潜んでいます。よく見られるのは春から梅雨にかけての時期と秋。特に梅雨時は、カタツムリにとって恋の季節なので活発に動き回ります。カタツムリは「雌雄同体」という、一つの体にオスとメス両方の機能を備えた生き物で、同じ種類のカタツムリ同士が出会って交尾すると、両方の個体が産卵するというちょっとかわった性質があります。
反対に、夏の乾燥して暑い時期や冬の寒い時期は、自分の粘液で殻の入り口にふたを作って休眠しています。
カタツムリは貝の仲間!
画像:PIXTA
「でんでん虫」とよばれることもあるカタツムリですが、彼らは昆虫の仲間ではありません。貝殻を背負っている見た目からもわかる通り、カタツムリは巻貝の仲間です。多くの貝はエラで呼吸をしているので水の中でしか生きていくことができませんが、カタツムリの仲間たちは肺で呼吸できるように進化した結果、陸の上でも生きていけるようになりました。
殻は体にくっついている
カタツムリの殻は彼らの家であり体の一部なので、カタツムリの成長と一緒に少しずつ大きくなります。殻の中には体をしまい込むための空間だけではなく、心臓や肺、胃袋など生きていくために必要な内臓のほとんどが収納されています。そのため、カタツムリは殻を取り外すことができません。
カタツムリの食べ物は? 歯があるってほんと?
あんなに体のやわらかいカタツムリの口にも、実は丈夫な歯が備わっています。ただし、カタツムリの歯は私達人間の歯とはつくりが異なっています。カタツムリの歯は「歯舌(しぜつ)」とよばれるもので、その名の通り舌の表面に1~2万個ものとても細かい歯がびっしりと並んだ構造をしています。この無数の歯舌をやすりのように使って、カタツムリは餌の表面を削りとるように食べていくのです。
そんなカタツムリは、落ち葉や生きた植物の葉、苔、キノコなどを中心にいろいろな物を食べて暮らしています。殻の材料となるカルシウムを摂取するために、貝殻やコンクリートまで、丈夫な歯舌で削り取って食べてしまいます。
ナメクジとの違い
実はナメクジは、カタツムリの一部の種類から、内臓を胴体に収めて殻を捨てる方向に進化して生まれた生き物です。その証拠に一部のナメクジには体内に小さな殻を持っている種類がいます。
ナメクジは乾燥や天敵からの攻撃にはとても弱くなってしまいましたが、殻がなくなった分、身軽になり、カタツムリが入れないような狭い隙間にも身を隠せるようになりました。また、殻を作るためにエネルギーを使ったり、カルシウムを補給したりする必要がなくなったので、カタツムリより早く成長できるというのもナメクジの強みです。
カタツムリの種類 日本で多いのは?
日本にはカタツムリやナメクジの仲間が約800種類住んでいると言われており、その中には日本にしかいない固有種も数多く含まれています。なぜ、狭い日本にこれほど多くのカタツムリが生息しているのでしょうか?
一説によると、日本特有の湿度が高くジメジメした気候がカタツムリの生育に適していたことに加え、もともと動きが遅く、長距離移動ができないというカタツムリの性質が影響して、日本各地それぞれの地域に住むカタツムリたちが独自の進化をとげていったためだと考えられています。
もしかしたら、皆さんが身の回りで何気なく見ているカタツムリも、実はとても珍しい種類だったりするかもしれませんね。
カタツムリを捕まえよう
カタツムリは動きも遅く、捕まえること自体はとても簡単な生き物なのですが、探す時期や場所を知っておかないと、全く見つからない場合もあります。ここではカタツムリを採集する時に気をつけておきたいことをいくつか紹介します。
探す場所や時期
カタツムリはジメジメしていて薄暗い場所を好む習性があるので、落ち葉の下や木の根元、石の下や植木鉢の側面などによく潜んでいます。カタツムリが活発に動き回る春から梅雨にかけての時期もしくは秋であれば、雨が降った次の日に家の外壁やガードレール、木の幹などの場所でカタツムリを発見することが可能です。また、明るい場所が苦手なカタツムリは夜に行動することも多く、昼のうちにジメジメした場所を探しておいて、夜や明け方に探しに行くという方法もあります。
冬の時期、落ち葉の下にいるカタツムリ/画像:PIXTA
乾燥の激しい夏や寒い冬は、カタツムリは休眠期間に入るので、この時期にカタツムリを採集するのは簡単ではありません。ただ、夏は木の幹や葉の裏、冬は落ち葉の下で眠っていることが多いので、このような場所を注意深く探すと見つけられることがあります。
素手で触るのはNG!捕獲のやり方
カタツムリは特別な道具を使わずとも手で簡単に捕まえることができる生き物なのですが、体から出す粘液の中に、寄生虫やその他雑菌が潜んでいる場合があるので注意が必要です。
少し触るだけなら問題ありませんが、カタツムリをさわった手で目をこすったり指をしゃぶったり、鼻をほじったり、傷口に触ったりすると、カタツムリについていた雑菌が体内に入り込んでしまう場合があります。なので、カタツムリを捕まえる時にはゴム手袋やビニール袋を手にはめてから採集するのがオススメです。また、素手で触ってしまった場合も、そこまで神経質になることはありません。石鹸でしっかり手を洗えば、これらの寄生虫や雑菌による病気を簡単に防ぐことができますのでご安心ください。
カタツムリに限らずですが、野生の生き物は毒がない種類でもいろいろな雑菌がついている場合がほとんどなので、外で自然とふれあった後は、手洗いを忘れないようにしましょう!
カタツムリの飼い方
画像:PIXTA
カタツムリは昆虫ケースで飼うことが可能です。飼育セットの床材には土を敷くのが一般的ですが、掃除のしやすさという点から、湿らせたキッチンペーパーやミズゴケを土の代わりに容器の底に敷くという方法もあります。余裕があれば、枝を何本か入れて、カタツムリが容器の壁面以外も移動できるようにしてあげてもよいでしょう。
エサは野菜が中心
カタツムリに与える餌は野菜が中心。カタツムリの種類や個体差によって好みが少しずつ違うのでいろいろな野菜を与えましょう。
先述した寄生虫や雑菌の問題があるので、カタツムリのお世話をした後、その手で人間が食べる分の野菜をうっかり触ってしまうことがないように注意してください。
また、野菜だけでは栄養が偏ってしまいます。時々金魚の餌などでタンパク質を与え、貝殻や卵の殻を飼育セット入れておいて、カタツムリが殻の原料となるカルシウムを補給できるようにしてあげましょう。
ここに気を付ければ大丈夫!飼い方チェック
◆適度に霧吹きをする
カタツムリは乾燥を嫌うのでこまめに霧吹き水をかけて、セットの中が乾燥しないようにしてあげましょう。この時、容器の中に水たまりができるほど水を与えてしまうと、雑菌が繁殖してカタツムリが弱ってしまうので注意してください。
◆飼育セットをこまめに綺麗にする
カタツムリは体から粘液を出しながら移動するという特徴があり、それに加えて糞の量も多いので、すぐに飼育セットの中が汚れてしまいます。なので飼育セットの床材は2~3週間おきに取り換え、容器自体も時々丸洗いしましょう。
◆置き場所に注意!
飼育セットの置き場所についてですが、カタツムシは高温にも弱いので、直射日光が当たらない場所に置いてあげて下さい。
◆休眠時期の管理はどうする?
カタツムリが冬眠や夏眠などの休眠期間に入った場合は、落ち葉やミズゴケを飼育セットにたくさん入れて、その中で眠れるようにしてあげましょう。霧吹きで湿度を調整しながら管理すれば、次にカタツムリが活発になる季節に入ったときに目を覚まして動き出してくれますが、休眠に失敗して死んでしまうカタツムリも少なくありません。休眠中の管理に自信がない場合は、夏は冷房、冬は暖房のきいた部屋でカタツムリを管理することで、カタツムリを休眠させずに飼うことも可能です。
◆カタツムリを繁殖させたい場合は?
カタツムリは土の中に卵を産む習性があります。土を使わずキッチンペーパーやミズゴケを使用したセットで飼育しているカタツムリを繁殖させたい場合、小さなビンなどの容器に湿らせた土とミズゴケを入れたものを飼育セットの中に設置してあげると、カタツムリが卵を産んでくれることがあります。
カタツムリは意外と寿命が長い
種類によってカタツムリの寿命は異なり、1年程度で死んでしまう種類もいれば、中には15年も生きたという報告がある種類もいます。思いのほか長生きですね!
私たちがよく目にするミスジマイマイという種類の場合、3~5年ほど生きるといわれています。
自由研究にも!カタツムリのうんちを調べよう
カタツムリは食べ物の色素を分解する能力が低いので、食べた物と同じ色のうんちをするという特徴があります。カタツムリにいろいろな餌を食べさせて、どんな色のうんちを出すか観察してみましょう!また、市販の色画用紙の中には、カタツムリの殻の主成分である炭酸カルシウムが混ぜ込まれているものがあり、これをカタツムリに与えると喜んで食べます。なので、カタツムリにいろいろな色の画用紙を与えて虹色のうんちを出させることも可能です。機会があればぜひ試してみてください。
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定価 | 1650円(10%税込) |
判型 | AB判、本誌96ページ(ソフトカバー)、別冊付録32ページ(いずれもオールカラー) |
発売日 | 2023年6月23日(金) |
発行 | JTBパブリッシング |
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