実は絶滅危惧種!? ミノムシの季節や中身を知ってる?成虫のオスとメスの違いに驚き

ミノムシ 昆虫芸人 堀川ランプ監修

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寒い季節に、木にブラブラとぶら下がっているミノムシ。絵本や工作などでミノムシになじみがあるお子さんも多いでしょう。ミノは何でできているの?中身はどうなっているの? 気になることがたくさん! 昆虫芸人の堀川ランプさんに、不思議なミノムシの秘密について教えてもらいました。

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堀川ランプさん(監修プロフィール)堀川ランプ
昆虫大好き芸人。変形菌にも詳しい。日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程修了。理系の研究発表を模した白衣スタイルでおこなうフリップ芸が人気。Youtubeで「堀川ランプの昆虫列伝」を配信中。日本変形菌研究会会員。成虫の会メンバー。当記事のイラストはすべて堀川ランプさん本人のよるもの!
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1.ミノムシの正体は?

ミノムシの正体イラスト

中身は、実は蛾の幼虫

実はミノムシは「ミノガ」という蛾の幼虫時代の姿!ずっと木にぶら下がっているイメージですが、注意深く観察していると、ミノの上の部分から上半身を出して移動したり、ほかの蝶や蛾の幼虫と同じように葉っぱを食べたりする様子を観察することができます。

ミノムシの種類と大きさ

日本には約50種類のミノガの仲間が生息していると言われていますが、大きくて目立つ種類ではオオミノガチャミノガがあげられます。

オオミノガは日本最大級のミノムシで、ミノの大きさは4~5センチ程度、主に枯葉を使ったミノを作り、枝から真下にぶら下がる形で枝についているのが特徴です。

ミノムシ

一方チャミノガは、オオミノガに次ぐ大きさのミノムシで、ミノの大きさは2.5~4センチ、こちらは主に小枝を使ったミノを作るのが特徴で、枝にぶら下がらず、斜めにくっついているのが特徴です。

ミノムシ

2.ミノムシの季節はいつ?

古典や俳句にも登場、季語は秋

ミノムシ

ミノムシは初夏のころに卵から生まれ、秋までに木の葉っぱを食べながらどんどん大きくなり、冬はミノの中で冬眠します。

実はミノムシは秋の季語で、松尾芭蕉や正岡子規の俳句にも登場します。また、清少納言の『枕草子』にもミノムシが登場することで知られていて、季節の風物詩として時代を超えて愛されてきた虫なのです。

ちなみに、松尾芭蕉の句「みのむしの 音を聞きに来よ 草の庵」のように、みのむしが鳴くという表現をしたものが多いのですが、実際にはミノムシは鳴きません。これは、同じように木の上に生息しており夏から秋にかけて「チン・チン・チン」と澄んだ音色で鳴くカネタタキという昆虫の鳴き声を、当時の人がミノムシの声だと勘違いしたものだと言われています。

3.ミノの秘密

ミノムシのイラスト

ミノはどうやって作る?糸の強度がすごい!

ミノは、ミノムシが口から出した糸で、枯葉や枝をつなぎ合わせて作られています。ミノムシの糸の強度は、「天然繊維で最強と言われてきたクモよりも強い」「ナイロンの4倍」といった研究結果があり、とても丈夫です。

ミノの中身はどうなっているの?

ミノの中身は、ミノムシの本体であるイモムシが入っていて、枝などにくっついている上の部分に頭を向けています(蛹になる段階で身体の向きを180 度変えます)。ミノの内側は糸だけで作られたフワフワした構造になっていて、これによって空気の層ができて、外の温度変化、特に冬の寒さからミノムシを守っているのです。

小さくてかわいらしいミノですが、とても高性能なんですね!

ミノを着てぶら下がる理由は天敵?

枯葉や枝で作ったミノを着てぶら下がることで、周りの景色にとけこみ、鳥などの天敵から見つかりにくくなります。ミノは、外敵から身を守るシェルターの役割にもなっているのです。

4.ミノムシの生態

ミノムシのイラスト

成虫は口がない!オスとメスでこんなに違う!

ミノムシは、成虫になると蛾になりますが、口が退化しており餌をとることができないため、幼虫時代に蓄えた栄養を使い果たすと死んでしまいます。

そのほか、ミノムシにはオスとメスでも大きな違いがあります。

オスのミノムシは、成虫になるとミノから出てほかの蛾と同じように飛びまわるのですが、メスのミノムシの成虫はというと、翅どころか脚も触角も目も口も退化した、まるでソーセージのような姿になります。メスの成虫は自分で動くことができないのでミノの中にとどまり、オスの成虫を呼ぶためのにおいを出します。そして、においに誘われてやってきたオスと交尾したあとは、ミノの中にたくさんの卵を産んでその一生を終えます。
一見すると可哀想に思えるかもしれませんが、翅や脚などの器官を成長させるための栄養を削って、その分の栄養を全て卵のために使うため、そしてその卵をミノという安全な場所で守ることに特化していった結果なのです。

オスのミノムシも、メスとの交尾を終えると栄養を使い果たし、口が退化していて餌をとることもできないのでそのまま力尽きて死んでしまいます。こうして見ると、ミノムシの一生は、儚いものですね。

寿命は1年、ミノムシの一生

ミノムシの寿命は、おおよそ1年です。

冬は、枝にぶら下がって冬眠をしています。

春になると蛹(さなぎ)になり、やがて羽化して成虫になると、交尾をして、オスは死んでしまいます。メスはミノの中に産卵した後、役目を終えてミノのなかで小さくしぼんで死んでしまいます。

初夏の頃に卵が孵化すると、生まれた幼虫たちは、ミノの外へと出て行き、自分でミノを作ります。そして、秋までにいろいろな木の葉っぱを食べて大きくなり、冬は木の枝にミノを固定して冬眠に入ります。

こうして、ミノムシの命が脈々と受け継がれていくのです。

ミノムシは移動する!頭と足を出して動く

ミノムシの幼虫

ミノムシは、ただじっと木にぶら下がっているのではなく、移動するときや餌を食べるときは、ミノの上の部分から上半身をのりだして動きます。その姿は、とてもかわいらしいです!鳥などの天敵や人間が近づいてくると、すっと器用に頭をミノに引っ込めます。

5.ミノムシはどこにいる?つかまえて飼育する場合

多くの蝶や蛾の仲間の幼虫は、種類ごとに決まった種類の葉っぱしか食べることができませんが、ミノムシはいろいろな種類の広葉樹を食べることができます。ですので、庭や公園に生えている木や街路樹などの枝を注意深く観察すると、比較的簡単に見つけることができます。

ミノムシは風に飛ばされないように、丈夫な糸を使って自分のミノと枝を固定しているので、取ろうと思ってもなかなか枝から外れません。無理に力を入れるとミノの中の幼虫を傷つけてしまうことがあるので、くっついている枝ごと切って持って帰るか、枝とミノをつないでる糸の部分を慎重にハサミで切って持って帰るのがよいと思います。

家での飼育は、ミノムシが冬眠している冬の間は、気温変化がなく、直射日光が当たらない玄関などで保管しましょう。春になってミノムシが活動し始めたら、もともとミノムシがついていた木の葉を枝ごと水に差して与えれば、比較的簡単に飼育できます。

6.ミノムシの着せ替え実験

ミノムシの着せ替え実験のイラスト

折り紙や毛糸でカラフルに

ミノムシがミノの材料にできるのは、枯葉や小枝だけではありせん。その気になればいろんなものでミノを作ることができます。

ここではミノムシにカラフルなミノを作ってもらう実験「ミノの着せかえ」をご紹介しましょう。

用意するものはミノムシと、ミノの材料となる折り紙や毛糸です。
まずはミノムシをミノから取り出します。ミノはとても丈夫にできているため、きれいに破くのは難しく、下手をすると中の幼虫を傷つけてしまうこともあります。上手く取り出す方法としては、ミノの両端を少しだけハサミで切って(もちろん、幼虫を切らないように少しずつ慎重に切りましょう!)、ミノの下からつまようじの尖っていない方などの棒をつっこんで中の幼虫を刺激してあげるとミノの上の穴から出てきます。無理やり取り出そうとせずに、あせらずゆっくりとやりましょう!

次に、取り出した幼虫を手ごろな容器にいれます。材料となる折り紙や毛糸を、ミノムシよりも小さいサイズに切って、上からかけてあげましょう。ミノの材料は少し多めに入れてあげるのがポイントです。

このまま2~3日放置すると、入れた材料を使ってミノムシが新しいミノを作ります。
あまり寒い場所に放置すると、ミノムシの幼虫の動きが鈍くなり、上手くミノを作ってくれない場合があるので、実験中は部屋の中の温かい場所においてあげましょう。また、ミノムシは種類や個体によって好きなミノの材料に差があることと、蛹になる準備期間に入っている幼虫は活動が鈍くなるため、幼虫のコンデションの関係でミノの着せ替えが上手くいかない場合があることは頭に入れておいてください。

この実験は、冬でも行うことができますが、実験中に冬眠から覚めて蛹になってしまったり、弱ってしまう可能性もあります。冬眠する前の秋頃が成功率が高くベストです。

注意点はいくつかありますが、手順自体はとても簡単ですので、試行錯誤しながらカラフルな色のミノを楽しんでみましょう!

実験が終わった後のミノムシは、寒い時期だと上手く枝にしがみつけないことがあるので、暖かい時期になるまで玄関など暖房が当たらない場所で保管し、暖かい時期になって動き回るようになったらもとの場所に返してあげましょう。

7.知ってる?実は絶滅危惧種!

ミノムシと渡り鳥のノビタキ

ミノムシと渡り鳥のノビタキ

ヤドリバエの寄生で減少

ところで、日本最大のミノムシであるオオミノガが、ここ30年ほどで急速に数を減らしていることはみなさんご存じでしょうか?

原因は、1990年代に日本に侵入してきた外来種である「オオミノガヤドリバエ」という寄生バエの一種です。このハエは、オオミノガがいる近くの葉っぱにとても小さな卵を産み、その卵をオオミノガの幼虫が葉っぱと一緒に食べてしまうことでオオミノガの幼虫の体内に侵入します。オオミノガヤドリバエの卵は、オオミノガの幼虫の体内で孵化してオオミノガの幼虫の栄養を奪いながら成長し、翌年の初夏にオオミノガの幼虫の体を突き破って出てきてミノの中で蛹になり、成虫になったらミノから脱出してまたオオミノガがいる近くの葉っぱに卵を産み付けるという生態を持った昆虫です。

オオミノガには、この恐ろしい外来種の天敵から身を守る手段をほとんど持っていないため、一方的に寄生されてしまいます。現在、宮崎県・徳島県・神奈川県・山口県・福島県では、オオミノガを絶滅危惧種に指定しているほど、事態は深刻です(2021年11月現在。準絶滅危惧種は除く)。

日本人が昔から親しんできた昆虫であるにも関わらずその数を減らしているミノムシ、深く理解した上で絶滅しないように見守っていきたいですね。

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