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カブトムシ幼虫の上手な育て方ガイド!水や温度・オスメス見分け方・マット交換の時期

カブトムシの幼虫/昆虫芸人 堀川ランプ監修

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子どもが飼育したい昆虫の筆頭といえば「カブトムシ」! カブトムシの幼虫の特徴や令数の豆知識、似ている幼虫との見分け方、幼虫がいる時期や場所、飼育のマット交換の時期まで、カブトムシ徹底ガイドをお送りします。夏に会えるカブトムシの成虫は、こんな幼虫時代をすごして地上にとびたっているんですよ。るるぶKidsの虫係こと、昆虫芸人の堀川ランプさんによるイラスト&解説です。

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目次(index)

堀川ランプさん(監修プロフィール)堀川ランプ
昆虫大好き芸人。変形菌にも詳しい。日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程修了。理系の研究発表を模した白衣スタイルでおこなうフリップ芸が人気。Youtubeで「堀川ランプの昆虫列伝」を配信中。日本変形菌研究会会員。成虫の会メンバー。当記事のイラストはすべて堀川ランプさん本人のよるもの!
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1.幼虫時代が大事!カブトムシの一生

カブトムシの一生のイラスト/昆虫芸人 堀川ランプ監修

カブトムシの一生は、実は短い?

カブトムシの寿命は幼虫期間を含めて約1年、成虫になってからの寿命は2~3ヶ月と言われています。カブトムシ同様に夏の昆虫の代表格とされるクワガタは、卵から成虫になるまで数年かかるうえ、種類によっては成虫になってからも何年も生きることを考えると、カブトムシの一生は結構短いのです。

幼虫の期間が一番長く、秋に急成長

約1年間のカブトムシの一生の中でも、幼虫で過ごす期間が一番長く、9月頃に卵から孵化(ふか)して5月頃に蛹(さなぎ)になるまで約8ヶ月間にもおよびます。生まれたばかりの幼虫は1㎝にも満たない大きさですが、秋の間に腐葉土をたくさん食べて成長し、最終的に10センチ前後にまで成長します。

成虫の大きさは、幼虫のときに決まる!

カブトムシは、成虫になってからだとどんなにエサをあげても体の大きさが変化しません! カブトムシの成虫の大きさは、幼虫時代にどれだけエサを食べて成長できたかで決まります。つまり、大きいカブトムシを育てるためには、幼虫時代の世話がとても重要なポイントなのです。

2.カブトムシの幼虫の特徴

カブトムシの幼虫の特徴/昆虫芸人 堀川ランプ監修

幼虫の体の点々は、実は呼吸器官!

カブトムシの幼虫をよく観察すると、体の両サイドに点々が並んでいるのが分かります。これは「気門(きもん)」という器官で、ここから空気をとりこんで呼吸をしているのです。匂いは感知できませんが、人間でいう鼻のようなものですね。気門は左右に9個ずつあります。

幼虫は目が見えない?

カブトムシの幼虫には目がありますが、ずっと土の中で生活しているため視力はあまり発達しておらず、明るさが分かる程度だと言われています。目があまり見えないかわりに、カブトムシの幼虫は全身に生えた細かい毛で周りの振動を感知していると言われています。

幼虫は3段階で成長<初令・2令・3令>

カブトムシの幼虫は、クワガタと同様に、脱皮ごとに初令・二令・三令と3つの成長段階があります。夏の終わりから秋にかけて卵から幼虫が生まれ、この生まれたばかりの幼虫が初令幼虫です。初令幼虫は体長が1㎝にも満たないほどですが、7~10日ほどすると脱皮して一回り大きい二令幼虫になります。二令幼虫はその後20日前後で脱皮して三令幼虫になります。三令幼虫の期間は秋~春までと一番長く、大きさは4cmぐらいから10cm前後にまで成長します。

★クワガタの幼虫飼育の記事はこちら

カブトムシ幼虫のオス・メスの見分け方

幼虫のうちにカブトムシのオス・メスを見分けるのは難しいですが、三令幼虫なら見分ける方法があります。幼虫のお腹側を見て、おしりよりもちょっと上の場所にV字の模様が入っているものは、オスの可能性が高いです。また、十分に成長したメスの幼虫は、おしりの色の濃い部分に白っぽい点が浮き出ることがあり、ここでも見分けることができます。

3.カブトムシと似ている幼虫の見分け方

カブトムシと似ている幼虫の見分け方/昆虫芸人 堀川ランプ監修

カブトムシと似ている幼虫は?

カブトムシの幼虫を野外で採集する際、同じような環境で見つかる姿形がそっくりな昆虫としてクワガタの幼虫、ハナムグリやカナブンの幼虫がいます。カブトムシの幼虫はこの中で特に大きく成長するので、冬以降に見つけたものは大きさで簡単に見分けられますが、秋に見つけた幼虫は大きさも似ているので、見た目での区別は難しいかもしれません。ここではそれぞれの種類の簡単な見分け方をお教えします!

幼虫の見分け方

●地面に置いてみる(ハナムグリ・カナブン)

背面歩行をするハナムグリの幼虫

背面歩行をするハナムグリの幼虫

カブトムシの幼虫と一番見た目がよく似ているのがハナムグリやカナブンの幼虫ですが、地面においた時、カブトムシの幼虫は普通にお腹を下にして歩くのに対しハナムグリやカナブンの幼虫は背中を下にして歩くことで見分けることができます。

●肛門を観察する(クワガタ)

クワガタの幼虫とカブトムシの幼虫の見分け方/昆虫芸人 堀川ランプ監修

クワガタの幼虫とカブトムシの幼虫の見分け方はさらに簡単。幼虫のおしりを見た時に横に割れているのがカブトムシ、縦に割れているのがクワガタです。

4.カブトムシの幼虫はどこにいる?

土の中にいるカブトムシの幼虫/昆虫芸人 堀川ランプ監修

成虫を飼って、卵から育てる

カブトムシの幼虫を手に入れる一番簡単な方法は、オスとメスをつがいで飼い、卵を産ませる方法です。また、8月ごろに野外から採集してきたメスは、既にオスとの交尾を済ませてお腹に卵を持っていることが多いので、採集してきたメスを育てる方法でも幼虫を得られる可能性は高いでしょう。

★カブトムシ・クワガタの成虫飼育の記事はこちら

幼虫採集の時期と場所

カブトムシの幼虫そのものを採集したい場合、時期は幼虫がある程度の大きさまで育った秋の終わり頃から春先にかけてがおすすめです。
カブトムシの成虫の好物であるクヌギやコナラの木が生えている場所の近くの、腐葉土が積み重なっている場所の土を掘り起こしてみましょう。使用済みのシイタケのほだ木が捨てられている場所も、カブトムシの幼虫が多いポイントです。幼虫採集の後は、掘り起こした土やひっくり返した枯れ木などは、必ず元に戻しましょう。

★クワガタの幼虫採集の記事はこちら

幼虫を購入する場合

最近では、ペットショップなどでもカブトムシの幼虫を購入することができます。お店にもよりますが、販売されている時期は幼虫が生まれる秋から蛹になる前の春先にかけて。幼虫の時期はオス・メスの判別が難しいので、どうしてもペアで成虫をそろえたい場合は、複数匹買うのが確実です。
また、ネット通販でも購入できますが、幼虫の状態を直接見られないため、初心者の方はなるべく店頭で直接幼虫を見て購入するのがおすすめです。

5.カブトムシ幼虫の育て方

カブトムシ幼虫の育て方/昆虫芸人 堀川ランプ監修

飼育セットとえさ

●えさは昆虫マット(幼虫用)や昆虫用の腐葉土

幼虫の飼育セットはとても簡単です!
昆虫ケースの中に、幼虫のえさとなる昆虫マットや昆虫用の腐葉土を10センチほど敷いて幼虫を投入するだけ。昆虫マットには成虫用の栄養が少ない商品と幼虫用の栄養が多い商品があるので、必ず幼虫用もしくは成虫と幼虫両方に使えるタイプを使いましょう。カブトムシの場合、マットを押し固める必要はありません。

●単頭飼育がおすすめ!ペットボトル飼育も可

衣装ケースなど大きな容器で複数の幼虫をいっぺんに多頭飼育する人もいますが、土の中の衛生環境が悪くなった時のマット交換が大変なので、できれば1匹ずつ単頭飼育するのがオススメです。幼虫の数が多くてケースが足りない場合は1.5~2ℓのペットボトルの上を切って、コバエ防止用の不織布をかぶせたものを使用しても育てることができます

水分と温度の管理

●霧吹きの量はどのくらい?

昆虫マットの丁度いい水分量は、手で握った時に形が残る程度。握った時に水がにじむ程度まで行くと加湿のし過ぎなので気をつけましょう。市販の昆虫マットの多くは、未開封の状態ならほぼ適切な水分量になっているのでそのまま使えます。土の表面が乾燥してきたら霧吹きで水をかけてあげて下さい

●温度変化の少ない玄関がベスト

次に温度管理について。屋外だと日照などで容器内の温度が上昇しすぎてしまったり、雨で水没してしまうリスクがあるので、なるべく避けた方がいいでしょう。また、屋内でも暖房がきいている場所に容器を置くと冬の間の成長が促進されすぎて、まだ寒い時期なのに成虫が羽化してしまうということもあるので、温度変化が少なく直射日光が当たらない玄関に置くのがよいでしょう。

●蛹室を作り始めたら、加湿しすぎに注意!

十分に成長した幼虫は、土の中に自分の体がすっぽり入る空間を作り、その中で蛹になります。この空間を「蛹室(ようしつ)」といいます。幼虫が蛹室を作るのにも適度な湿り気が必要ですが、湿り気が多すぎると蛹室のなかにだんだん水が溜まって蛹室内の蛹が死んでしまうことがあるので注意が必要です。幼虫が蛹室を作るまでの水分管理が上手くいっていれば蛹になってからは「ちょっとマットがしっとりしているな」程度の水分量さえあれば加湿しなくて大丈夫です。

昆虫マットの交換の頻度

飼育セット内の昆虫マットの地表にカブトムシの幼虫の糞がたくさん目立つようになってきたら、昆虫マットを新しいものに入れ替えましょう。クワガタの幼虫はフレーク状の糞をするのに対し、カブトムシの幼虫の糞は楕円形の粒状です。秋の間はだいたい2ヶ月に1回程度を目安にマットの交換をしましょう。冬の間はカブトムシの幼虫の活動も鈍くなるのでマット交換はしなくても大丈夫。その後は温かくなる3~4月に1回だけマット交換をすれば、蛹になるまでマット交換はしなくても大丈夫です。

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6.幼虫飼育の心配…これで解決!

カブトムシの幼虫と子ども

マットの上に幼虫が出てくるときは?

カブトムシの幼虫を飼っていると、マットの地表に幼虫が出てきてしまうことがたまにあるのですが、これには主に2パターンの原因が考えられます。

●原因1:土の中が不衛生になっている

マット交換を忘れていてマットのほとんどが幼虫の糞になってしまっている場合や、加湿をしすぎてしまっている場合によく見られる現象です。この場合は、マットを新しいものに交換することで解決できます。

●原因2:昆虫マットが発酵して炭酸ガスが発生している

昆虫マットに含まれている枯葉や木を微生物が分解する時に炭酸ガスを出すのですが、容器の通気性が悪いと炭酸ガスのせいでカブトムシの幼虫がうまく呼吸できなくなり、新鮮な空気を求めて地上に出てきてしまう場合があります。こちらは微生物のはたらきが活発な新しいマットに交換した直後によく見られる現象です。容器の蓋に穴を開けて通気性をよくしたり、手間はかかりますが一度マットをたらいなどに広げて加湿しながら数日おくことでガス抜きをしたりすることで防ぐことができます

幼虫が動かないときは?

飼育しているカブトムシの幼虫が動かなくなってしまうことがありますが、心配はいりません!幼虫が動かなくなる原因は2つあります。

●原因1:気温が低い

寒い冬の期間や3月や4月の寒い日にみられます。気温が上がればまた元気に動き出すので心配しなくて大丈夫です。

●原因2:蛹になる準備をしている!

蛹になる準備ができた幼虫は、えさを食べなくなり、周りの土を押し固めて自分の体を収める空間「蛹室」を作るため、1ヶ所にとどまるようになります。蛹室作りは5月頃から始まります。上手く成長が進んでいる合図ですので、心配せずにそっと見守ってあげましょう。

カブトムシの幼虫は、死ぬと体がしぼんで黒く変色します。逆に言えば、体が変色していなければ生きている証拠なので安心してください。

7.春はいよいよ幼虫から蛹に!

カブトムシの幼虫

4月ごろのカブトムシの幼虫。体が少し黄色く変化。

春(3・4・5月)にやるべきこと

春になったら、カブトムシの幼虫飼育もラストスパート! 温かくなりはじめの3月~4月の間に1回だけマット交換をして冬の間にたまった糞を取り除きましょう。これ以降マット交換は基本的にやらなくて大丈夫です。この時期になると幼虫の白い体が少し黄色くなってきますが、これは十分成長した合図!5月になると蛹室を作って蛹になっていくので、幼虫たちを刺激しないためにマット交換はストップしましょう。

サナギから約1ヶ月で成虫に!

カブトムシの蛹室の中の変化/昆虫芸人 堀川ランプ監修

5月になると、カブトムシの幼虫たちは自分たちの作った蛹室の中で蛹になります。
蛹は最初のうちはきれいな飴色をしていますが、蛹の中でだんだん成虫の体ができていくにつれて黒くなっていきます。蛹は非常にデリケートなのでなるべく動かさないで観察しましょう

もしまちがって蛹室を壊してしまった時や、地上で蛹になってしまった時は、トイレットペーパーの芯を湿らせた昆虫マットの上に立てて、倒れないように周りに土をかぶせて固定することで人口蛹室を作ることができます。蛹を落とさないよう注意しながら、頭が上になるようにやさしくトイレットペーパーの芯の中に入れて、上から経過を観察しましょう。

蛹から成虫になるまでは、大体2週間~1ヶ月かかります。羽化したばかりの成虫はまだ体が柔らかいので数日間はじっとしています。この時もなるべく触らないようにしましょう。体がしっかり硬くなって動きまわるようになったら、成虫用の飼育セットに移しましょう。この段階でもしばらくは体の中が成熟しきっていないため、最初のうちはあまりえさを食べません。カブトムシの体の準備がいつ整ってもいいように、えさを少量だけケースに入れておくとよいでしょう

8.よくある質問

オガクズで育てられる?

カブトムシの幼虫のエサとなる腐葉土は、落ち葉が微生物の力で分解・発酵されてできたもの。多くの栄養を含んでいます。それに対してオガクズは木を削っただけのもので、あまり栄養がありません。オガクズはカブトムシの幼虫のエサには向いていませんが、栄養が少ない分雑菌が繁殖しにくいので、成虫を飼育する時の床材としては最適です。

共食いの心配はある?

カブトムシの幼虫は腐葉土を主なエサとしてくらしているので、共食いすることはありません。ただ、沢山の幼虫を同じ容器で飼育していると、いつの間にか数が減ってしまっていることがあります。
幼虫の体は微生物が分解しやすい成分でできているので、傷ついたり弱ったりして死んでしまうと短期間で土にかえります。これが、土の中という観察しづらい場所で起きているので、幼虫が急にいなくなった=共食いしたように見えるのです。

カブトムシの幼虫を狭いケースで飼育していると、「病気が発生した時に他の個体に感染が広まりやすい」「成長が遅い個体が十分に腐葉土を食べられない」などの理由で幼虫が死んでしまうリスクが高くなります。可能な限り個別もしくは少ない数で飼育しましょう!

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2021年5月に、小学6年生の子が素朴な疑問からはじめたカブトムシの観察から、常識を覆す発見へとつながり、世界的な生物専門誌に発表されたというニュースがありました。カブトムシをはじめとする昆虫観察・昆虫飼育は、子どもの好奇心や気づき、観察力などをぐんぐんと広げてくれると思います。この夏は、ぜひカブトムシの採集や飼育にチャレンジしてみてください!

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