夏に採集したカブトムシの成虫は、秋冬に寿命を迎えます。一方で、クワガタの成虫は、種類によって寿命が異なります。飼育をしているご家庭では、大切に育てていればこそ、寿命はとても気になりますよね。長生きさせるコツは? 長寿のカブトムシ・クワガタはどれ? ギネス記録はあるの?などなど、寿命にまつわる気になることを、るるぶkidsの虫係こと昆虫芸人の堀川ランプさんが、かわいいイラストと共にわかりやすく解説します!
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(監修プロフィール)堀川ランプ
昆虫大好き芸人。変形菌にも詳しい。日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程修了。理系の研究発表を模した白衣スタイルでおこなうフリップ芸が人気。Youtubeで「堀川ランプの昆虫列伝」を配信中。日本変形菌研究会会員。成虫の会メンバー。当記事のイラストはすべて堀川ランプさん本人のよるもの!
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カブトムシ成虫の平均寿命は?なぜ短い?
カブトムシ成虫の平均寿命
カブトムシの成虫になってからの寿命は2~3ヶ月とされています。寿命には個体差がありますが、一般的にメスの方がオスよりも1ヶ月程度寿命が長いとされています。オスはメスと交尾した後は生き物としての役目を終えますが、メスには交尾後も卵を産んで次の世代を残すという大切な仕事があるためオスよりも長く生きる必要があり、これがオスとメスで寿命に差が出る大きな理由とされています。
そのほか、オスはほかのオスとエサやメスをめぐって戦う必要があり、その中で体力を消耗したり傷ついたりしてしまうことが多いことも、オスの寿命がなぜ短いかに関係しています。また、交尾や産卵は、カブトムシを含む全ての昆虫にとって生きる目的であると同時に、体力を消耗してしまう行為でもあります。そのため、オスもメスも、交尾していない個体の方が長生きしやすいとされています。
だいたい何月まで生きられる?
野生のものか飼育されているものかによって、カブトムシが何月まで生きられるかは大きく変わってきます。
●野生のカブトムシの場合
野生のカブトムシは、夏の暑さ、エサの奪い合いによる体力消耗、カラスなどの天敵に襲われてしまう危険があるため、8月いっぱいでそのほとんどが姿を消してしまいます。
●飼育されたカブトムシの場合
飼育されているカブトムシは、豊富なエサと安全な環境、過ごしやすい気温のおかげで9月下旬まで生きている個体が数多くいます。さらに、カブトムシ自身の羽化する時期が遅かったなどの要因が加わると、11月頃まで生きてくれる個体もいたりします。
冬眠する種類のクワガタは寿命が長い
クワガタは、冬眠する種類としない種類がいる!
クワガタは種類によって寿命がさまざまです。特に、冬眠をする種類としない種類とで、大きく寿命が異なります。
冬眠とは、寒い時期に生命活動を最小限に抑えて暖かい時期を待つこと。クワガタの場合は、だいたい11月~3月頃までの期間が冬眠シーズンにあたります。冬眠状態になると余計な体力を使わなくて済むため、冬眠をすることができるクワガタには長生きできるものが多いようです。一方で、冬眠しない種類のクワガタは、カブトムシの成虫と同じようにひと夏の寿命しかありません。
冬眠するクワガタの種類と、その寿命は?
オオクワガタ、ヒラタクワガタ、コクワガタなどは、土や朽ち木のなかで冬眠をすることができます。これらの種類は、成虫になった後も数年間生き続けます。
飼育環境下では平均2~3年、上手くいけば5年ほど生きてくれます。気温が低い時に冬眠するので、逆に言えば、気温が高いと上手く冬眠モードに入れないことになります。ですので、クワガタを冬眠させるときは、暖房の影響を受けない場所に飼育ケースを移動させることが必要です。
<もっと教えて!ランプさん>
冬眠は、生命活動をほとんど停止させる命がけの行為なので、冬眠したまま死んでしまうクワガタもいます。もし冬眠させるのが不安な場合は、そのまま暖房のきいた部屋で冬眠させずにクワガタを飼育することも可能ですが、その場合は、冬眠しない分体力を使ってしまうので寿命はいくらか短くなってしまいます。
冬眠しないクワガタの種類と、その寿命は?
冬眠をしないクワガタとして代表的なのは、ノコギリクワガタ、ミヤマクワガタです。これらの種類の成虫は、個体によって羽化後の活動のしかたが異なります。夏のはじめまでに羽化した個体は、その夏のうちに蛹が収まっていた空間である「蛹室」を脱出して活動を始めますが、夏の終わりから秋にかけて羽化した個体はそのまま蛹室にとどまって冬を越し、次の年の夏から蛹室を出て活動を始めます。どちらの場合にしても、蛹室を出た後は平均3ヶ月程度の寿命といわれています。
寿命が近づく兆候(サイン)と、長生きのコツは?
寿命が近くなったカブトムシやクワガタには、いくつかの兆候がみられます。わかりやすいものでいうと、寿命が近くなった個体は体のバランスが取れず、転んだりひっくり返ったりしやすくなります。また、カブトムシやクワガタの脚先には「ふ節」と呼ばれる、小さな節がつながってその先に爪がついている箇所があるのですが、長く生きた個体ではこのふ節がとれてしまっている個体が多くいます。ふ節がとれると木につかまったり、転倒した後に起き上がったりすることが難しくなり、そこから弱って死んでしまうことも多くあります。そのほか、エサを食べる量が減って食べ残しが多くなることも寿命が近づいているサインです。
<寿命が近づいたサイン>
- 転んだり、ひっくり返ったりしやすい
- 脚先の「ふ節」がとれてしまった
- エサの食べ残しが多くなる
★カブトムシ・クワガタの成虫飼育の記事はこちら
寿命を伸ばすコツは?
カブトムシもクワガタも、寿命が短くなる大きな原因のひとつは、ケンカによるケガです。昆虫は人間と違い、ケガをしても傷が治ることがないので、ちょっとしたケガでも寿命に関わります。特に理由がない場合は、1頭ずつ別のケースで飼育するか、広いケースで飼育してあげましょう。
また、体力を消耗してしまう交尾や産卵も、カブトムシやクワガタにとっては寿命を短くする大きな要因です。繁殖させるつもりがない場合は、オスとメスを別のケースで飼育することでよって長生きさせることができます。交尾・産卵をさせてあげたい場合は、栄養のあるエサをしっかり与え、交尾後はオスとメスを別のケースにうつしたりすることで体力の消費を最小限におさえることができます。
そのほか、食べ残しや排泄物で汚れた昆虫マットやケースを定期的に綺麗にしてあげたり、寒暖差の少ない場所で飼育することも寿命を延ばすのに有効です。
<寿命を伸ばすポイント>
- ケンカをしないよう、一頭ずつケースで飼う
- 交尾や産卵をさせない場合は、オスメスを別のケースで飼う
- 交尾や産卵をさせる場合は、エサをたっぷりと与え体力の消耗を補い、交尾後はオスとメスを別のケースにうつす
- ケースを清潔に保つ
- 寒暖差の少ない場所で飼育する
世界のカブトムシ・クワガタの寿命は?最長は?
ここまでは日本にいる代表的なカブトムシやクワガタの寿命について話をしてきましたが、ここからは世界のカブトムシ・クワガタやマイナーな種類を含めて話を進めましょう。
世界のカブトムシの成虫寿命
とても人気で有名なヘラクレスオオカブトの寿命は個体によって大きな差があり、短い個体だと半年ほどですが、長生きするものは1年半も生きることができます。コーカサスオオカブト、アトラスオオカブトの寿命は3ヶ月~半年と、日本のカブトムシよりも若干長い程度です。
世界一重いカブトムシとして知られるゾウカブトの仲間の成虫寿命は、種類や個体にさまざまで、10ヶ月近く生きるものから1ヶ月ほどで死んでしまうものまでいます。
そんななか、日本に住んでいるコカブトムシという種類は体長2㎝程度と小柄ながら成虫寿命はトップクラスで、半年~最長2年近く生きることが知られています。しかし、ヘラクレスオオカブトをはじめとする外国産カブトムシの多くは幼虫期間が1~2年もあるのに対してコカブトムシの幼虫期間は2ヶ月程度なので、成虫の寿命が長い種類が必ずしも卵から生まれてからの全体の寿命が長いという訳ではなさそうです。
世界のクワガタの成虫寿命
クワガタの場合、オオクワガタの成虫が7年も生きたという例があるようで、これはクワガタの中でもダントツの長さです。オオクワガタ・ヒラタクワガタ・コクワガタの仲間はどれも2~3年、あるいはそれ以上生きるご長寿な種族ですが、これらの仲間以外で代表的な種類だとニジイロクワガタが1~2年ほど生きる長生きなクワガタとして知られています。
そのほかの種類の外国産クワガタの寿命はというと、オウゴンオニクワガタやギラファノコギリクワガタなどで8ヶ月~1年程度生きるとされていますが、日本の気候ではそこまで長く生きられないこともあるようです。
カブトムシの長寿のギネス記録はある?
カブトムシの寿命の正式なギネス記録はありませんが、ごく稀に「年明けまで生きた」という報告もあります。しかし、ここまで長生きするのは特例であり、ほとんどのカブトムシは9月いっぱいで死んでしまうため、10月に入っても生きていたら長生きと言えるでしょう。
カブトムシの大きさや飼育環境・採集場所などの違いと寿命の関係なども記録しながら、よりカブトムシが長生きできるような飼い方を自分で考えてみるのもいいかもしれませんね。
<カブトムシの成虫寿命の目安>
- カブトムシ(ヤマトカブト):2~3カ月
- ヘラクレスオオカブト:半年から1年半
- コーカサスオオカブト・アトラスオオカブト:3カ月~半年
- ゾウカブト:1カ月~10カ月などさまざま
- コカブトムシ:半年~最長2年 (幼虫期間が短く、成虫期間が長い)
死んでしまったらどうする?
さびしいことですが、どんなに大切に世話をしていても、いつか寿命が来てしまうことは避けることができません。死んでしまったときは、公園など公共の土地に埋めるのは、生態系を壊す原因になりうるのでNGです。基本的には、地域のゴミ分別に従って処分をするのが適切です。
ゴミに出すのは心が痛むという場合は、自宅の庭がある場合はご自宅の庭に、庭がない場合は家の植木鉢に埋葬してあげると、きちんとお別れができていいですね。または、標本するのもおすすめです。
子どもにとっては死にふれる大切な機会。子どもがショックを受けていたら、それは大切に育てていた証拠。生きものには寿命があることを話して、悲しむ気持ちに寄り添ってあげてください。
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書名 | 『るるぶKids こわくない!カブトムシ・クワガタの採集と飼育』 |
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定価 | 1650円(10%税込) |
判型 | AB判、本誌96ページ(ソフトカバー)、別冊付録32ページ(いずれもオールカラー) |
発売日 | 2023年6月23日(金) |
発行 | JTBパブリッシング |
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