にょろにょろと細長く、主に畑や土で見かけるミミズ。そもそも昆虫なの?何を食べているの?アスファルトで干からびているのはどうして?など、その正体が気になっている人も多いのでは?今回はるるぶKidsの昆虫博士としてもおなじみの堀川ランプさんに、ミミズの面白い生態について解説してもらいました。
(監修プロフィール)堀川ランプ
昆虫大好き芸人。変形菌にも詳しい。日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程修了。理系の研究発表を模した白衣スタイルでおこなうフリップ芸が人気。Youtubeで「堀川ランプの昆虫列伝」を配信中。日本変形菌研究会会員。成虫の会メンバー。当記事のイラストはすべて堀川ランプさん本人のよるもの!
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ミミズは昆虫じゃないけど虫
ミミズは主に地中で生活している、ひも状の生物です。体はいくつもの節に分かれていて、脚はなく、皮膚から直接酸素をとりいれて呼吸をしています。
昆虫も、同じように体がいくつもの節に分かれていますが、昆虫は体が頭・胸・腹の3つに明確に分かれていることや、多くの種類に脚があること、気門という体の側面にある穴を使って呼吸をしていることなど、体の構造にミミズとの大きな違いがいくつもあり、ミミズと昆虫は全く違う生き物だとわかります。しかし、場合によってはミミズを「虫」として分類している場合があります。なぜでしょうか?
実は「昆虫」と「虫」は少し意味の違う言葉。「虫」は哺乳類や鳥類、魚類以外の小さな生き物たちを意味する言葉で、虫には昆虫類とミミズの他に、クモ、ムカデ、サソリ、ヘビ、カエルなどが含まれます。
「虫」という区分は科学に基づいた分類という訳ではなく、人間が便利だからという理由で設定されたグループ分けであるということを覚えておきましょう!
ミミズの体のひみつ
ミミズはオスとメスの区別がない
ミミズは、一つの体にオスとメス両方の性質を備えた「雌雄同体」という特徴を持つ生き物です。ただ、同じ体にオスとメスの特徴があっても、1匹だけでは子孫を残すことはできません。
大人のミミズには「環帯」という色の薄い部分があり、ここが子供を産むために重要な器官になっています。2匹のミミズがこの環帯の近くの部分をくっつけて、お互いに精子を渡し合います。その後、それぞれのミミズが環帯から膜を分泌し、その中に卵と精子を入れて受精卵を作り、受精卵の入った膜を頭から脱ぎ捨てる形で産卵します。産み落とされた卵は、膜に包まれたカプセルのような形になっていて、これを「卵包」といいます。
1つの卵包に入っている卵の数はミミズの種類によってまちまち。1個の卵しか入っていない卵包もあれば、中には数十個の卵が入っている卵包もあるようです。単純な生き物に見えるミミズですが、子孫を残すシステムは複雑なのですね。
食べ物は何を食べる?
ミミズは土の中に含まれる枯れた植物や動物のフンなどを食べて生活しています。排泄するフンの中には、植物の成長に必要な栄養が多く含まれています。また、ミミズが地中を動き回ることで土の中に程よい空間ができて、通気性と水はけが良くなり、そこに生えている植物の根に良い影響を与えます。
つまり、ミミズは自然界のお掃除屋さん的な役割を担い、栄養を土に混ぜ込みながら耕してくれているのです!この性質に注目して、農業の世界では、畑の土を良くするのにミミズを使うこともあります。
どうやって移動する?
一見つるつるしているように見えるミミズの表面ですが、実は目には見えないくらい短くて固い毛が、頭からおしりの方に向けて無数に生えています。この毛が周りのものに引っ掛かってくれるので、ミミズは体を伸ばしたり縮めたりするだけで前に進むことができるのです。
もし機会があればミミズの体を実際に触って確かめてみてください!頭からおしりの方向へなでた時はするする指がすべっていくのに対し、逆におしりから頭の方向へミミズの体をなでると、なかなか指が通らず、ざらざらとしたものに指が引っ掛かるような手触りを感じることができるはず。このざらざらこそが、ミミズに生えている毛なのです。
※ミミズを触った後は、必ず手を石鹸で洗いましょう。
どうしてアスファルトに出てくるの?
雨上がりに、アスファルトの上で干からびてしまっているミミズの姿をよく目にすると思います。なぜ、普段土の中に住んでいるミミズがアスファルトの上に出てきてしまうのでしょうか?
一説によると、大量の雨が降り土の中が水浸しになってしまうと、皮膚から直接酸素を取り入れているミミズは呼吸ができなくなってしまいます。酸素を求めて地上に出てきてしまうそうです。この時、もともと住んでいた土の上を離れてアスファルトの上に移動してしまうと、雨が上がった後地下に潜ることができず、そのまま干からびて死んでしまうのだと言われています。
アスファルトのミミズ。見たことがあるのでは?/画像:PIXTA
また、地上に出ても体が乾燥する心配がなくなるので、ミミズは雨が降ったタイミングで生息範囲を広げようと地上に出てきて活発に動き回ります。晴れるまでに新しく生息に適した場所を見つけられなかったものが、地上で干からびてしまっているのではないかとする説もあります。
ミミズは鳴く?
俳句の世界には「蚯蚓(みみず)鳴く」という秋の季語がありますが、実際のミミズには音を出すための器官がないので鳴くことはできません。しかし、同じく地中に住む昆虫であるオケラは、翅を震わせて「ジー・ジー」という音を出します。
昔の人は、この音をミミズが鳴いている音だと勘違いして「蚯蚓鳴く」という季語が生まれたのだといわれています。
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ミミズの種類
日本には現在分かっているだけでも約180種類のミミズが生息しているとされています。ミミズの仲間には、まだ名前がついていないものも多く、まだ見つかっていない種類も含めると500種類ほどのミミズが日本にいるのではないかとも考えられています。今回は、そんなミミズの中で代表的な種類をいくつか紹介します。
- フトスジミミズ
節ごとの縞模様が目立つミミズ。落ち葉が積もっている場所によくいる。長さ20㎝前後まで成長する。 - ハタケミミズ
環帯より前と、その後ろ数節分の色が濃いのが特徴。畑や森林、ゴミ溜めによくいる。長さ20㎝前後まで成長する。 - シーボルトミミズ
主に西日本の森林に生息する大型のミミズで30~40㎝にもなる。体は紺色で見る角度によって虹色に輝く。 - イイヅカミミズ
主に関東〜中部地方の産地で見られる大型のミミズで、45㎝にまで成長することもある。 - シマミミズ
体長6~18㎝。湿った環境に住み着き、よく生ゴミを分解するコンポストに利用される他、釣り餌としてもよく使われる。 - イトミミズ
体長5~10㎝。水中に住むミミズの仲間で田んぼや下水、側溝などの泥の中に上半身をうずめ、下半身をゆらゆらと動かしながら呼吸をしている。
ミミズの飼い方
ミミズの飼育自体は難しくはありません。バケツや昆虫ケースにホームセンターのコーナーで売っているような黒土を敷き、そこに餌となる落ち葉や腐葉土を敷いてあげれば完成。シマミミズの場合は野菜の切れ端などもよく食べます。
ミミズを飼う時の注意点
<霧吹きで適度に湿らせる>
土が乾いてきたら定期的に霧吹きで湿らせてあげる必要があります。ただ、水が多すぎると、雑菌が繁殖したりミミズがおぼれてしまったりするので注意が必要です。
<ミミズは暑さが苦手>
涼しい地面の下に住んでいるミミズは暑さが苦手なので、飼育セット自体は、直射日光の当たらない、涼しい場所で管理しましょう。
ミミズの寿命って?
ミミズ自体の寿命はシマミミズで2~4年、シーボルトミミズで2年ですが、その他多くのミミズは1年程度といわれています。ミミズは一生のほとんどを土の中で過ごす生き物なので、飼育していてもなかなかその姿を見ることができませんが、もしかしたら、ミミズを飼育する中で新しい発見ができるかもしれません。
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定価 | 1650円(10%税込) |
判型 | AB判、本誌96ページ(ソフトカバー)、別冊付録32ページ(いずれもオールカラー) |
発売日 | 2023年6月23日(金) |
発行 | JTBパブリッシング |
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