「運動が得意な子になってほしい」と願うパパママは多いでしょう。「両親ともに運動が苦手だから、きっとわが子も…」と心配している方もいるのでは? 実は、運動が得意になる可能性は誰もが持っていて、その可能性は「8歳」までにさまざまな運動あそびを経験することで伸ばすことができます。子どもの発育発達や運動能力に詳しい吉部紳介さんに、教えてもらいました!運動会シーズンを楽しく迎えましょう。
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吉部紳介さんプロフィール
公益財団法人 吉田記念テニス研修センター(TTC)アシスタントディレクター。NATA公認アスレチックトレーナー、NASM公認パフォーマンス・エンハンスト・スペシャリスト。日米のプロスポーツチームでトレーナーを歴任し、数々のトップアスリートと接した経験から、低年齢期の運動体験がのちの運動能力を大きく左右することに気づき、放課後の外あそびに注力した学童「遊育くらぶ」を発足。「あそび、まなび、いきる」をスローガンに、子どもの健全な発育を支援している。
運動を得意にする「8歳」までの大切さ
運動神経に、生まれつきの良い悪いはありません
「○○君は運動神経が良いね!」「私は運動神経が悪くて…」といった会話をよくしますね。
しかし、本来、運動神経という名の神経はありません。
私たちは、体を動かすとき、脳から運動の指令をだし、それが神経細胞を通じて筋肉に伝わることで動きます。この運動に関わる神経の伝達回路のことを「運動神経」と呼んでいるのです。
立ったり座ったり、文字を書いたり、箸を持ったりするのも、神経の伝達が上手くできているから。つまり、運動神経は、誰もが持っている神経回路を、運動経験により使いやすくしたものと言えるでしょう。生まれつきの運動神経に良いも悪いもありません。
冒頭の「運動神経が良い」というのは、正確には「運動能力が高い」ということ。運動能力は、子どもの頃の運動体験によって、後天的に伸ばすことができます。
たとえオリンピックの金メダリストの両親から生まれた子どもでも、生まれたあとの環境のあたえ方次第では、運動能力は全く伸びません。逆に言えば、運動に親しんでこなかった両親から、運動能力に優れた子どもに育つことも十分あり得ます。
運動神経や運動能力はつい遺伝だと思いがちですが、そうではないのです。運動が得意になる可能性は誰もが持っていて、それは先天的なものではなく、あくまで後天的なものになります。
動作の習得は「8歳」がピーク!
<発育発達のピークと運動能力の習得時期>
運動が得意になるには、まず「時期」がとても大切です。
誰もが生まれながらにたくさんの神経細胞を持っていますが、赤ちゃんの頃は未発達で、まだ細胞同士のつながりがありません。成長とともに神経細胞同士のつながり(シナプス)が発達して、情報の伝達回路ができ、体が動かせるようになっていきます。
この神経の伝達システム全体のことを「神経系」と呼ぶのですが、神経系の発達は実はとても速く、5-6歳で80%、12歳までに100%に達します。動作習得のスピードが最も高まるのが8歳頃。8歳をすぎたらダメということではありませんが、一番習得しやすい8歳までの時期を、ぜひ有効に過ごしたいものですね。
運動が得意=「動きの引き出しの多さ」
では、8歳までの時期に、どんなことをすればいいのでしょうか。
それは、あそびや運動を通して「さまざまな動きを経験すること」です。
私たちが体を使って経験したことや感覚は、小脳という部分に蓄積されます。小脳をメモリデバイスと考えるとわかりやすいでしょう。さまざまな動きを経験することで、メモリデバイスに「動きの引き出し」が増えていきます。引き出しの数が多いほど、運動の指令が司令塔の大脳から出されたときに、指令を適切に捉え、筋肉に伝え、思った動きができるようになります。
<運動が得意な子は「動きの引き出し」が豊富>
たとえば、跳び箱を跳ぶことを想像してみてください。走る、跳ぶ、手をつく、体を支える、着地する…などの一連の動きがあって、はじめて跳ぶことができますよね。跳び箱が得意な子は、決して跳ぶことだけが優れているわけでなく、たくさんの「動きの引き出し」を持っていて、なおかつ、引き出しから適切な情報を引き出せる子なのです。
8歳までにやっておきたい運動あそび
すべてのスポーツの基礎になる「36の動き」は、あそびで身につく!
8歳までの時期に増やしたい「動きの引き出し」、具体的などんなものでしょうか。
子どものうちに身につけておきたい「36の基本動作」をご紹介しましょう。私たちが毎日無意識に行っている体の動きは、この36パターンに分類されます。これらの基本動作をバランス良く身につけることが、すべてのスポーツの基礎になり、運動能力につながります。
かといって、トレーニングのように36の動きをやろうとしたり、早くから専門的なスポーツ教室に通わせたりする必要は全くありません。
<身につけておきたい36の基本動作>
ひと昔前は、普段の外あそびの中で、無意識にこれらの動作を体験することができていたのです。しかし現代は、子どもたちのあそびが成立するのに必要な三つの間=「仲間、時間、空間(場所)」が失われてしまい、自由にあそべる環境がなくなっています。
ですから、「意識的にあそぶこと」が必要です。36の基本動作は「あそび」を通して十分に育むことができます。
あそびで大切にしてほしい3つのこと
あそびの種類は、体を動かすあそびなら、どんなものでもいいです。公園でどんぐり拾いや落ち葉拾いをするだけでも、立ったりしゃがんだり、いろいろな動作ができます。キャッチボールがまだできない年齢でも、ボールを握って大きさや形を感じることは、とても大切な経験として、脳に蓄積されます。ぜひ、親子で公園などに積極的にあそびにでかけてください。
私があそびで大切にしてほしいことは、3つあります。
【1】親も楽しむ&本気であそぶ
人間の脳には、まね(模倣)に特化したミラーニューロンという神経細胞があります。言葉を喋るのも箸を持つのも、子どもたちはすべてまねから学んでいきます。
あそびや運動も同じです。
運動が苦手な親御さんもいらっしゃると思いますが、上手下手はさほど重要ではありません。親が本気で楽しむ姿こそ、子どもの好奇心を育み、運動を好きになる近道となります。
【2】強制せず、自発性を大切に
あそびは本来、自発的なものです。しかし、大人はあそびを強制してしまうことが多いです。子どもにはできないことがたくさんありますが、子どもなりに考える力があります。なるべく先回りをせず、目先のことに一喜一憂せずにいてあげたいですね。自発的なあそびの体験は、自己肯定感や達成感にもつながっていきます。
【3】多種多様な運動あそびを!
先にも述べたように、子どもは、誰もが運動が得意になる可能性を持っています。ですから、まずは子どもの可能性を制限することなく、多種多様な運動あそびをする環境をあたえてあげてほしいと思います。発育発達が活発な時期に経験したすべての親子あそびが、子どもにとっては有益なものになります。細かいことや因果を気にしすぎずに、親子で楽しくあそんでください。
年齢別・親の関わりアドバイス
<3歳前後>
自分の好きなことをやる時期です。子どもが夢中になったことを、一緒に楽しんでください。せっかく大きな公園に行ったのに、ずっと石ころを拾っていたということも大いにあるでしょう。子どもはそのときの興味が満たされると、必ず自発的に次のことに興味を広げていきます。子どもの「うれしい、たのしい」という感情を大切にしてあげましょう。
<4-6歳頃>
体の成長にともない、あそびの幅が広がっていきます。同時に「うまくいった、いかなかった」という判別ができるようになります。次はこうしたい、もっとうまくやりたい、そんな気持ちも芽生える時期です。「できた!」という成功体験がたくさんできると、自己肯定感につながります。
<小学生以上>
ルールが理解できるようになり、チームプレーを楽しめるようになります。あそびがスポーツへとなっていく時期です。競争意識も芽生えます。親と真剣勝負ができる楽しみも増えますね。親が不得意なスポーツでも、ぜひ真剣にチャレンジしてほしいです。
8歳までの運動経験が、ゴールデンエイジ期に花開く!
9-12歳の時期になると、神経系の発達がほぼ完成に近づき、筋肉や骨格の発達も進み、「ゴールデンエイジ」と呼ばれる成長の黄金期がやってきます。
ゴールデンエイジ期は、新しい動きを即座に覚えられたり、目的にかなった効率的な動きができたりするようになるなど、人生の中で最大に運動能力が洗練される時期です。
8歳までのプレゴールデンエイジ期に培った「動きの引き出し」が充実しているほど、このゴールデンエイジ期は、いっそう豊かに花開きます。
おすすめのあそび&いちおしスポット
あそびを通して自分の体を扱う経験は、すべての競技の基礎になります。
今しかない子どもの成長の時期を、ぜひ親子で楽しみながら、伸ばしてあげてください。
最後に、私が自分の子どもと楽しんでいるあそびをご紹介しましょう。
<アスレチック>
先述の「36の動き」の多くを体験できるのは、すばり「アスレチック」。
アスレチックはぜひおすすめしたいです。
無理強いせず、子どもの年齢に見合ったもの、子どもがやりたがるものを楽しみましょう。ぜひ保護者の方も本気で挑戦してください。
<プール>
「36の動き」のなかで、家では、そして子ども一人ではできないのが「水」を使うもの。泳ぐ、浮くという動作は日常では体験できませんよね。お休みの日はプールにでかけてあそぶのもおすすめです。
<スポーツ観戦>
プロフェッショナルな選手達の動きやゲームをみて、「かっこいい!」「楽しい!」と思うことも大きな刺激になります。
親が好きなスポーツ観戦に連れて行くのもおすすめです。
オリンピック・パラリンピックが開催されたら、親子で大いに観戦を楽しみたいですね。
いちおしスポット「ふなばしアンデルセン公園」
アスレチック、大型遊具、水あそび、自然体験など、いろいろなあそびを満喫できる公園です。一日中楽しめますよ。
※ 新型コロナウィルス感染拡大防止のため、ふなばしアンデルセン公園の営業状況は通常とは異なることがあります。最新情報は必ず公式サイト等でご確認ください。
<ふなばしアンデルセン公園の掲載記事>
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「るるぶKids こどもの運動能力がぐんぐん伸びる公園」東京版&京阪神版も要チェック!
東京都内&京都・大阪・神戸エリアにある運動能力をぐんぐん伸ばせる公園を、厳選して紹介するガイドブックです。「るるぶKids」と同様に、それぞれの公園で体験できる12の基本動作をアイコンでわかりやすく表示しています。
公園によって設置されている遊具や施設は千差万別! 公園によって自由な遊びのなかで体験できる「基本動作」は異なります。アイコンを参考にいつもとはタイプの違う公園にでかけてみることが、運動能力を伸ばすことにつながります。
ニューノーマルの時代にこそ楽しんでほしい、週末ごとの小さな冒険。近所にある公園やちょっと遠くの公園まで、ガイドブックを参考におでかけしてみては?公園遊びを楽しみながら、子どもたちの運動能力をぐんぐん伸ばしましょう!
本書で紹介している公園は、「るるぶ Kids」内でも随時紹介していきます。遊具ごとの基本動作解説や、授乳室やおむつ替えトイレの写真など、本書では紹介しきれなかった詳細な情報を Webで確認できます。エリア別に整理されている本書で行きたい公園を探し、おでかけ先では「るるぶ Kids」の記事を見ながらあそびを楽しむ。そんな使い方がおすすめです!
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るるぶKidsでアスレチックができるスポットを探そう
おすすめのアスレチックがあるスポット約300件をエリアごとに掲載。本格的なアスレチックコースがあるスポットや、アスレチック遊具がある公園などがいっぱい!年齢・身長・体重の条件などを確認して、挑戦したいスポットを探してみましょう。人気のジップラインやターザンロープの情報も満載です。
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<室内アスレチック・遊び場>
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大型10選 / ボルダリング / トランポリン